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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005060008 高村薫 マークスの山 1993 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2005/06/28   公開日:2005/06/29

連続殺人事件を追う警官たちの姿を濃密に描いた高村薫の直木賞受賞作

 

 高村薫(たかむら・かおる、1953-)による直木賞受賞作である。

 非常に濃密な文体である。最初1993年に早川書房から出版されたあと、2003年に講談社文庫に収められたのだが、このとき全面改稿がほどこされているようで、オリジナル版ではどうだったかは私にはわからないが、ほかの警察小説が色あせて見えるほど書き込まれているといえる。

 小説は昭和五十一年(1976年)の秋、南アルプスの北岳周辺で幕を開ける。登山者が麓の飯場前で殺される。逮捕された飯場に住む作業員岩田幸平の供述には大きな矛盾はなく、山梨県警の佐野警部補は若干の疑問点を心に抱きつつも手続きどおり山梨地方検察庁に送致した。

 ところが平成元年(1989年)、岩田幸平の飯場の近くで白骨死体が発見され、現在は出所して東京に住んでいた岩田が山梨県警の佐野にこの事件もあっさり自供してしまう。

 そして平成四年(1992年)、これらの前史を踏まえて連続殺人事件が発生する。まずは都立大裏の閑静な住宅街で元組員の畠山宏。続いて王子の公務員宿舎前で法務省検事局の次長検事の松井浩司・・・。捜査を担当する警視庁捜査第一課七係の合田雄一郎たちが現場の刑事としての矜持をかけて捜査に挑むが、この事件、当初から霞ヶ関や警察・検察トップからの圧力がかかる。

 やがて明確になってくる犯人は?現場の捜査官たちから上層部が隠そうとしているものは何か?「マークスの山」とは何か?

 捜査手法・手続き、現場とキャリア組との確執、そして職か正義かのギリギリの選択を迫られる合田たちの姿が濃密な文体で描かれる。また「マークス」の心象風景、「マークス」を保護する看護婦・真知子の視点からもこの物語は語られていて、最後のクライマックスまでまさに登りつめるのである。

 しかし国家機構が私益のために隠蔽しようとしているもの、いわばこの小説全体の背骨であるべき「動機」が弱いように思われるのが半分、また犯人像自体が精神 疾患に苦しんでいる人々への偏見・差別を助長する結果になるのではないかとも危惧することが半分で素直に楽しめないところがあったため、評価は8点!


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