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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2005050011 | 浅倉卓弥 | 四日間の奇蹟 | 2003 | 日本 | 宝島社文庫 |
評者:発起人 評価:6 読了日:2005/05/25 公開日:2005/05/26
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音楽と脳科学を背景に救いを描いた感涙小説
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まずはバックグラウンドから。本書は、第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作であり、佐々部清監督、吉岡秀隆・石田ゆり子等出演で2005年6月4日から東映系でロードショー公開される同名の映画の原作でもある。「ついに100万部突破!」らしい。 著者の浅倉卓弥(あさくら・たくや、1966-)は札幌生まれ。東大文学部卒業後レコード会社や翻訳会社、雑誌編集部勤務ののち、本作でデビューした。第2作は『君の名残を』(2004、宝島社)。 さて、感想である: 途中、すなわちこの文庫本で220ページぐらいまで、つまり半分ぐらいまではプロットも描写も文句のつけようのないほどすばらしい!しかし、後半は私の期待した方向(つまりミステリー的な方向)に進まずに救いとか信仰などというテーマが前面に出てきてしまうのである。 いやこの小説の冒頭に「キリエ・エレィソン−主よ、導きたまえ」とちゃんと書いてあるのに、私は無知のため、このキリエっていうのは誰だ?外国人と結婚した日本女性かなどと思って読んでいた。 この小説で大きな役割を占めている音楽の描写はその曲を聴いたことがなくても聴いたような気にさせる、いやそれは言いすぎか、うろ覚えの曲を頭の中に再生させるような、すくなくともCDを引っ張り出して聴かせるぐらい秀逸である。(この本に出てくるクラシックの名曲を収録した「CDブック」も宝島社から発売されたそうである。) 語り手の「僕」(如月敬輔、29歳)はピアニストを目指していたが8年前、ウィーンに留学中のある出来事のため断念せざるをえなくなった。人生のすべてと言ってよかった可能性が閉ざされた「僕」は簡単に言えばふてて暮らしていたのである。 しかしウィーンでの出来事がきっかけとなって、「僕」の家に住むことになった知的障害を持つ少女、千織(現在は中3ぐらい)に音楽を一度聴けばそのすべてを暗記し再生できるという特異な才能を見出す。千織は「僕」になつき、ピアノの練習をする。 この小説の2番目の味付けは脳の不思議についてである。養老孟司先生ならなんと言うかはわからないが、千織の障害の原因を突き止めようとして「僕」は本を読んだり、医師から話を聞いたりするのであるが、そういう場面で現在の科学・医学が解明している範囲で脳について語られる。 さて、「僕」と千織は施設などを回って、千織のピアノを聞いてもらう慰問活動のようなことを行っている。そしてこの小説のメインの舞台となる人里はなれた医療施設を訪れたときに、この施設を支えていると言っていい岩村真理子(「僕」より一学年年下)と千織との間で奇蹟が起きるのである。 この真理子という登場人物、主役のひとりなのであるが、どうも「僕」ほど感情移入しにくかった。この人物が最初登場したときのしゃべり方がバラエティ番組のタレントのようであるのがいけないのか。 しかし、この小説のほんとうのテーマは「死」なのである。必然である「死」に規定されているならまじめに生きることにどんな意味があるのか。「救い」は得られるのか。 作者は最後まで真正面に自分の書きたかったことを書いたのだと思うが、「涙が止まりませんでした」(映画の主題歌を歌っている平原綾香)とまでは私の場合はいかなかった。映画でも見てみるか。 |