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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2005050008 | 雫井脩介 | 犯人に告ぐ | 2004 | 日本 | 双葉社 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2005/05/19 公開日:2005/05/19
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劇場型犯罪に劇場型捜査で挑む神奈川県警の特別捜査官
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残忍な犯罪が後を絶たないように見える今日この頃。未解決事件も多いような気がする。しかもテレビや新聞などのマス・メディアはそういう事件を飯のタネにしてないか?いや実はそれを見たり読んだりして無責任に「推理」したりしている私などはえらそうには言えないのである。 つまり犯罪がエンターテインメント化しているのである。もちろんそう言い切ってしまえばすべてのミステリーはけしからんということになりそうだが、近年の傾向は報道と娯楽も一体化しつつあるように見えることである。 現実はよくわからないが、犯罪小説(ミステリー)においては、不可欠の役者であるはずの被害者・加害者(犯人)・警察(探偵)に加えて、近頃ではメディア関係者や、メディアを通じて一般人もまた登場人物となりうるのである。まゆをひそめたりしつつそのような犯罪に「参加」するのである。 雫井脩介(しずくい・しゅうすけ、1968-)はこの作品で、そういう状況を逆手にとって、「劇場型犯罪」に対する「劇場型捜査」という物語を作り上げた。この発想がまず非凡である。テレビ局の視聴率競争、最近の警察の捜査手法、警察という組織内部での葛藤や対立なども綿密に取材されていて、しかも『火の粉』(2003)で実証済みの滑らかな筆さばきで読者を離さないのである。 神奈川県警の捜査官、巻島は「ワシ」を名乗る犯人による児童誘拐事件のメディアへの対応を誤り、足柄署に左遷されていた。県警への信頼感や検挙率低下を一挙に打開するため、「ワシ」とは別の連続児童殺人事件(川崎事件)を解決する「特別捜査官」として呼び戻される。数年間の間に巻島は心に負ったわだかまりを抱えたまま、髪は肩甲骨あたりまで伸ばしている、一見怖いもの知らずの捜査官になっていた。 巻島は夜のニュース番組「ニュースナイトアイズ」に週二、三回のペースで出演し、「バッドマン」を名乗る犯人に呼びかけをはじめる。「バッドマン」も巻島にメッセージを送り始める。視聴率は高騰し、裏番組の「ニュースライブ」は苦戦を強いられる。実はこの両番組の間の川崎事件をめぐるスクープ合戦がこの本のかなりの部分を占めている。警察とメディアの関係、メディア間の競争、潰し合い、情報操作などがリアルに語られる。 「バッドマン」は捕まるのか?どうやって?その正体は?にわかに有名人になった巻島はどうなるのか? 手に汗握る展開に思わず一気読みして忘れそうになるのは、この作者の登場人物たち(人間)への温かく、フェアな視線である。巻島も自己陶酔的に正義を振りかざすB級ハードボイルドにありがちな主人公タイプではない。悪役や脇役にもそれなりの事情や想いがあり、高みから断罪するような描き方は排されている。一人一人が実にていねいに描かれているのだ。 この視線こそがこの作者のもっとも貴重な特質かもしれない。 |