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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2005020007 | ジョン・グリシャム | 評決のとき | 1989 | アメリカ | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2005/02/17 公開日:2005/02/17
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アメリカ南部と司法制度を描ききったグリシャムのデビュー作
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面白かった! でもこのエネルギーはどこから出てくるのか、とてもかないません。雑なところもないではないが文庫本上・下巻で計1000ページ近い分量を一気に読ませる力量、しかも現役の弁護士としてハードな仕事をこなしながら完成させたというこのジョン・グリシャム(1955-)のデビュー作、いったいどんなモノ食べてるの?(ポークリブ?ナマズ?オクラ?) 舞台はアメリカ深南部のミシシッピ州フォード郡クライトン。事件が起きるまでは実に平和な町だった。ところが二人の若いどうしようもない白人が十歳の黒人少女を繰り返しレイプ・暴行し重傷を負わせた。 二人は逮捕されるが、少女の父親カール・リー・ヘイリーは「当然のこととして」、二人を殺すことを決意、裁判所内に潜み、M-16ライフルで犯人たちを文字通りズタズタに射殺してしまう。おまけに付き添っていた保安官助手にも巻き添えで重傷を負わせてしまう。 この弁護を引き受けたのが、作者を彷彿とさせる若き「草の根弁護士」、ジェイク・ブリガンス。妻カーラと4歳の娘ハンナとともに「歴史的建造物」指定のヴィクトリア朝様式の家に住み、赤いサーブに乗り、どんなときでも朝5時半に起きて仕事に励む野心的な男である。(ちなみに白人である。) うー、そりゃ気持ちはわかるが、しかし、いくら愛娘を強姦されたからと言ってそんな、M-16で二人射殺して無罪になるか?ジェイクもそんな弁護を引き受けて大丈夫か?と思ってしまうのであるが、ここがアメリカ社会の奇怪さというか特徴なのである。 強姦されたのが白人の娘で復讐をしたのがその父親であれば、そもそも逮捕などされず、裁判にもかけられず、英雄として賞賛されるのは決まりきったことだというのである! 問題を複雑にしたのは、特に南部に根強い黒人への人種差別意識だった。あの悪名高き人種差別主義団体クー・クラックス・クランによる示威運動とテロ攻撃が発生し、全州の教会などを地盤にした公民権運動の流れを汲む黒人たちがカール・リーの釈放・無罪を求めて大挙集結、町は騒然となる。「禿鷹」(マスコミ)も押しかけ、ついには州兵までもが動員される。 ジェイクも脅迫され、実際にさまざまな被害に会う。しかし、法曹界を追放された急進リベラル派で大金持ちだが酒びたりの前雇用主ルシアン・ウィルバンクス、ボランティアで手伝いを申し出たロースクール学生のエレン・ロアークなどとチームを組み、あらゆる倫理的・合法的方法を駆使して検察側と渡り合う。 すべては十二人の陪審員の評決にかかっている。ジェイクの仕事ぶりが詳細に描かれ、これを読めばミシシッピ州の刑事裁判や司法制度のすべてがわかるといって過言でない。驚くべきシステムである。 検事や判事、保安官などは選挙で選ばれる。(だから再選に有利なように行動する。)容疑者・カール・リーは弁護士とはもちろん、ときどき家族と会ったりもしてかなり自由である。陪審員選任をめぐって検察側・弁護側はしのぎを削って争う。日本でも「裁判員」制度が導入されるらしいが、この本を読むと自分は選ばれたくないと思う人が多いのではないだろうか。 さて、はたして評決は? 今やリーガル・サスペンス第一人者であるグリシャムであるが、このデビュー作は当初ほとんど売れなかったそうだ。第二作『法律事務所』(1991)、続く『ペリカン文書』(1992)が大ヒットし、あらためて注目されて売れたという。本作も1996年に映画化されている。(未見) |