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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005010011 ジョン・ディクスン・カー 帽子収集狂事件 1933 アメリカ 創元推理文庫

評者:発起人    評価:5   読了日:2005/01/31   公開日:2005/01/31

霧のロンドン塔で発見された奇妙な死体−読者に挑戦する本格派(パズラー)の傑作

 

 アメリカに生まれながら、1931年から17年間英国に住んだ、黄金時代の本格推理小説界の雄、ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr, 1906-77)の傑作のひとつ。

 霧につつまれたロンドン塔の逆賊門で新聞記者フィリップ・ドリスコルの死体が発見される。凶器は十四世紀の太矢、しかも死体の頭には服装と合わないシルクハットが被せられていた。ドリスコルはロンドンを騒がせていた連続帽子盗難事件を追って記事にしていたのだ。

 ご存知、ギデオン・フェル博士がロンドン警視庁のハドリー警部、アメリカからロンドンに着いたばかりのランポール青年とともに捜査に乗り出す。ドリスコルの叔父にあたる引退した大物保守政治家のウィリアム・ビットン卿は、アメリカで入手したという、あのエドガー・アラン・ポーの幻の手稿、世界初の探偵小説の手稿を盗まれてしまっていた。

 ビットン卿の弟のレスター・ビットン、レスターの妻のローラ、ロンドン塔の副長官・メースン将軍、ビットン卿の娘シェーラの婚約者で将軍秘書のダルライ、米国の古書収集家のアーバー、女探偵のラーキン夫人、従卒や執事など読者にとっては疑わしげな人物が続々登場する。

 真犯人は?事態は二転三転し、最後に意外な犯人と意外な結末がほとんどの読者の予想を超えて明らかになる。

 憎めないフェル博士の人柄、作者自身の分身かとも思われるランポールなどの登場人物造形のために救われているが、現代ではよっぽどの暇人でない限り、この謎を言い当てることのできる読者は少ないのではなかろうか。(実は、私はまだ小学生の頃、この作品を一度読んでいるのであるが、中身はすっかり忘れていた。)

 特に二時間ドラマなどで、俳優の大物度から犯人を推理するという方法に慣れている私にはかなりキツい一編ではあった。しかし本格推理小説というジャンルにこだわる読者にはこたえられない面白さを持った一編であることはすでに江戸川乱歩がたしかベスト10に本作を取り上げていたことからもわかるように折り紙つきである。

 蛇足ではあるが、「振り込め詐欺」のルーツかと思われるようなトリックもある。


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