感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005010004 樋口裕一 頭がいい人、悪い人の話し方 2004 日本 PHP新書

評者:発起人    評価:4   読了日:2005/01/10   公開日:2005/01/10

お金と時間を使って説教されたい人にはお薦めの一冊!

 

 昨年出版され、大ベストセラーになっているというこの本、四十項目にわたって、「バカな話し方」の実例と、それぞれについて「周囲の人の対策」および「自覚するためのワンポイント」で構成されている。

 つまり、「あー、こういう人いるいる!」と自分の周囲の人を思い浮かべながら楽しむという読み方もできるし、「私はこんなバカな話し方をしてはいないだろうか?」という内省的な読み方もできるという仕組みである。

 四十項目におよぶ「バカな話し方」すべてについて、私はこんな話し方はしないと断言できる人はいないだろう。四十項目全部の症状から免れているような人は話をしない人だとしか考えられないからである。また周囲に四十項目で挙げられているような話し方をする人を知らないという人も同様の理由からいないだろう。

 しかし、私はもともと「自分の価値観だけですべてを判断する」(p32)ためか素直には楽しめなかったし、「人の話を聞かない」(p134)ためか自らを反省しようという気持ちにもなれなかったのである。

 「自分のことしか話さない」(p101)私が思い浮かべたのは、もうすでに四半世紀ほど前、社会人(会社人)としての一歩を踏み出したときの研修の社外講師の方々の話である。そして研修施設の廊下や講義室を照らしていた冷たい蛍光灯の光である。あー、これで俺も賃金奴隷の仲間入りか、それにしてもこの連中(講師)の言ってることのなんと陳腐なことかと感じたことを思い出したのである。

 つまり、この社会・秩序に刃向かわない程度に分析的で知的でありなさい、それ以上の知性は不要であるのみならず、有害だから、そんな人は「社会ではやっていけないよ」という脅迫的メッセージである。(「少ない情報で決めつける」(p47))

 本書の著者、樋口裕一(ひぐち・ゆういち、1951-)はフランス文学の翻訳などのかたわら、小学生から社会人まで小論文・作文指導に携わってきたという「文章」のプロだそうである。それだけに、この本、隙がないのである。鉄壁の守りなのであり、必ずある命題と反対の命題も含まれている。(「ケチばかりつける」(p43))

 それにしてもなぜこの本が売れているのか?企業の研修用テキストか?それともそんなに「頭がいい」と思われることが大切なのか?

「・・・まずは表面的に愚かに見えないように注意するうち、実際に知的になってくる・・・」(p4)のなら苦労はしないよ、ね?

 えっ、「ぐずぐずと話して何を言いたいのかわからない」(p156)?失礼いたしました。


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