感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004120009 野田知佑 日本の川を旅する −カヌー単独行− 1982 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2004/12/29   公開日:2004/12/29

死と隣り合わせの冒険家の体験が描き出した日本の川

 

 カヌー(正確に言うとカヤックだそうである)で日本の川を14本(っていう数え方をするのかどうか知らないが)下った紀行文である。

 著者の野田知佑(のだ・ともすけ、1938-)は「ツーリング・カヌーイスト」の日本における草分け的存在だそうであるが、私は椎名誠の小説『岳物語』で岳に釣りを教える人としてしか知らなかった。

 優れたノン・フィクションに特有の、著者の体験を読者自らのものとして伝える力をこの作品も十分に持っている。著者とともに読者はまだ見ぬ(見ていてもいいのだが)四万十川の清流と流域の人々との会話を感じるのである。多摩川という「川の残骸」に恐怖するのである。

 またすべての川をダムなどで堰き止め、コンクリートで川岸を固め、生活廃水や農薬混じりの水を垂れ流している連中に怒り、そしてそれを許してきた自分の責任にも思いをいたすのである。

 著者はさりげなくしか触れていないが、日本の川といえども難所はある。私が読んだ文庫版の解説で椎名誠も触れているように著者は死と隣り合わせという冒険家の心意気を捨て去っていないのだ。そしてそういう自ら選び取った道を追求している著者に、都会に生息する私などは、憧れと、なんとなく引け目を感じてしまうのである。いわゆる「男のロマン」へのうらやましさかもしれない。

 ひとつひとつの文章が詩的であり、描写が絵画的である。さらっと読み飛ばせない重み・濃度を湛えた作品である。これは著者の技量ということもあるが、川の瀬、瀞、滝、岩、河原、魚などの生き物、流域で出会う人々と著者との交流が支えている力でもある。


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