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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004120001 恩田陸 夏の名残りの薔薇 2004 日本 文藝春秋

評者:発起人    評価:7   読了日:2004/12/02   公開日:2004/12/02

読者に「視覚化力」を要求する小説−いっそのこと映画化してもらったほうがいいのでは?

 

 冬には雪に閉ざされる、沢渡家が所有するホテルに毎年招待される客たち。

 すでに「先代」は無く、迎えるのは伊茅子(いちこ)、丹伽子(にかこ)、未州子(みずこ)のすでに老女の域を迎えている三姉妹たちである。

 招待されるのは、三姉妹から見ると甥にあたり、今や沢渡グループを率いる(三代目の)隆介、隆介の妻の桜子と桜子の弟の時光。

 丹伽子の娘で舞台女優をしている瑞穂、そしてそのマネージャーを務める田所早紀、沢渡家を上顧客にしている自動車ディーラーの辰吉、なにかの教授をしているらしい天知。

 えー、これでよかったかな?全部で主な(今生きている)登場人物は十人。

 小説は、短い「主題」で始まり、「第一変奏」から「第六変奏」まで続く。この各「変奏」では語り手が変わり、沢渡家の秘められた事件、登場人物たちの秘められた感情と関係が明らかにされていく。

 この大きなホテル自体が秘密の暴露を触発する力があるようだ。各変奏の最後には必ず事件が発生する。

 そして図書室でいつも上映され、小説の中に挿入されるアラン・ロブ=グリエの『去年マリエンバードで』という映画原作小説からの引用。

 テーマは明らかに記憶あるいは時間である。それなのに、舞台設定は古典的な推理小説(いわゆる「嵐の山荘」)のそれである。そしてこの小説には普通の推理小説的解決がない。

 すべては起こりうるし、起こってもおかしくなかったし、実際に何が起こったかは重要ではないのだ。

 豪華な食事、お酒、お喋り、お茶会、夕食時の三老女による「パフォーマンス」、ホテルと沢渡家の伝説、そして犯罪。

 このような広い意味でのお喋り=物語を楽しむのがこの小説を楽しむコツなのである。

 それで結局これは何なんだ?あるいは、自分とは縁のない世界だと思いがちの私も納得しておこう。

 小粋で少々実験的で心理的なこの小説、自らが演じるつもりで読むべし。そんな気になれないという人たちは、雪に閉ざされ、何もすることのない豪華ホテルに持っていって読むのが一番であるが、そういう機会はめったにあるものではない。

 私が読む恩田陸(おんだ・りく、1964-)作品はこれがたしか4作目だが、あとひとつぐらい読んでみようか。

 本作は読者に「視覚化力」を要求するのであるが、これはやっぱりプロの俳優が演じる映画にしてもらって見たほうがいいかもしれない。


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