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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004110012 津本陽 最後の相場師 1983 日本 角川文庫

評者:発起人    評価:3   読了日:2004/11/28   公開日:2004/11/28

成功した後は名誉が欲しくなる?−実在の「相場師」をモデルにした小説

 

 もちろんこの小説はフィクションである。「文中に登場する人物・団体名・地名等、実在するものとはいっさい関係がありません」と書かれている。

 しかし、菱刈金山を開発した「住友金属鉱山」や非鉄金属会社の「同和鉱業」、セメントの「日本セメント」などの企業に投資し、巨利を得、「最後の相場師」と呼ばれた是川銀蔵(1897-1992)をモデルにしていることは明らかである。

 この小説では、佐久間平蔵という名前で登場するこの人物、波瀾万丈の生涯を送り、すでに七十歳代も後半になってから上述の企業などへの投資で名を上げたのである。

 この小説が最初『裏に道あり−「相場師」平蔵が行く』(1983、日本経済新聞社)として出版されたときは住友金属鉱山への投資で大いに名と利益を上げた直後である。

 しかし、株式投資で一山当ててやろうと考えている人以外には、「佐久間平蔵」絶賛のちょうちん小説(こんな言い方があるのかどうか知らないが)のようにしか感じられないのではないだろうか(株式市場で「ちょうちん筋」という言葉はあるようだが)。

 作者の津本陽(つもと・よう、1929-)に内発的にこの小説を書きたいと言う気持ちがあったのか、それとも偉人伝を書くように割り切って書いたのかがわからないのである。そもそも佐久間平蔵≒是川銀蔵からの取材協力無しにはこの小説ができたとは思えない。

 佐久間平蔵は無欲で生活は清貧、いわゆる「乗っ取り屋」とは無縁で、自分の大局観にのみ基づいて、自己を言わば試すために投資を行う。儲けた金は福祉基金を作ったり、寺社に寄付したりする。(今でも是川奨学財団という団体は存在しているようである。)

 株式で成功する前の人生はかなり不透明である。この小説では、日本統治下の朝鮮半島で鉱山や製鉄会社を経営し、敗戦とともに裸一貫で日本に戻り、闇商売で資金を蓄え、その後事業を行ったが、失敗、しかし土地投機で資金を蓄え、大規模な株式投資に乗り出したとされている。

 はたして実際はどうだったのか?

 ひとつだけ言えるのは、このような株式投資の方法が20年以上前の市場でこそ成立しえたということであり、その意味で「最後の相場師」という題名は妥当である。


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