感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004110011 石黒耀 震災列島 2004 日本 講談社

評者:発起人    評価:9   読了日:2004/11/23   公開日:2004/11/23

驚くべきタイミング!−新しい社会派パニック小説の傑作

 

 この地震をテーマとした小説、発売日が今年の10月22日、新潟県中越地震の前日である。驚くべきタイミングでの出版であるが、中越地震の発生でテレビなどで地震をテーマにした娯楽作品が放送自粛の憂き目にあったように、埋もれさせるにはおしい傑作である。

 著者の石黒耀(いしぐろ・あきら、1954-)はメフィスト賞(第26回)を受賞した『死都日本』(2002)で作家デビュー、本作が2作目である。『死都日本』のほうは未読だが火山小説らしく、異例の反響を呼んだらしい。(私、寡聞にして知りませんでした。)

 本作は東海地震と東南海地震の同時発生という事態を舞台にした近未来小説であり、読者に日本が常に地震の危険に曝されていること、そのメカニズム、そしてむしろ地震こそが日本列島を創り上げてきたものだということをわかりやすく説明してくれている。多分この分野の新書などを読むよりも頭に入りやすい。

 そして地震予知や被害の大きさを決めるのは、実は自然条件では無く、政治経済的な条件であること、今このような大地震が起こった場合に日本という国が国民の命や安全、財産を守るようにできていないこと、むしろ「政官財ヤクザ体制」はこういう大災害をも言わば織り込み済みでそこからさらに権力を強化する手を着々と打っているに違いないということが克明に描かれている。

 この小説の主人公、「私」=明石真人(あかし・まこと)とその父・善蔵(ぜんぞう)は名古屋に住み、「ボーリング屋」(地質調査会社)を営んでいた。善蔵は町内会長をしているが、阿武里(あぶさと)住宅という一見してヤクザと思われる会社とその「社員」たちが町内に越してきてから、異様な事件が多発する。ちゃんとした証拠は無いが、この阿武里がどうも怪しいというわけで、硬骨漢の善蔵は「社長」・阿武里満に面会し、住民の不安を伝える。

 嫌がらせはピタッと収まったが、真人のひとり娘、友紀(ゆき)が犠牲になる−。真人の妻、孝子は精神が崩壊してしまう。「私」と善蔵はとてつもない復讐計画を立案する。しかもなんと、来るべき東海・南東海地震を利用して阿武里たちを皆殺しにするという計画である。

 この真人・善蔵による「戦争」を描く過程で、現代日本の「政官財ヤクザ体制」が明らかにされ厳しく糾弾される。世の中、「こういうふうに」できているとは誰もがわかっているのにそれを改められない、そうであれば、地震を利用するしか無いのである。

 政治的に著者の考え方に賛成できないという人もいるだろうし、この真人・善蔵の戦いとパニック小説的な側面がうまく融合していないということは言えるかもしれない。

 しかし、私は、昼寝の時間を削ってまで読んでしまいました。ゴジラが今度で一応終りということであれば、2005年末にはこの『震災列島』を映画化して欲しいな(→東宝、円谷プロ)。映画になったら、浜岡原発批判とか自衛隊海外派兵批判などの部分は削られるかもしれないが・・・。 

 あっ、それから、この小説では地震による新幹線事故を見事に予言していることを付け加えておこう。この本で描かれている他の惨事のシミュレーションが夢物語では無いということである。


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