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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004110010 宮部みゆき スナーク狩り 1992 日本 光文社文庫

評者:発起人    評価:9   読了日:2004/11/22   公開日:2004/11/22

旨いっ!作家志望者殺し、宮部みゆきの一級エンターテインメント!

 

 ふと手にとった、この作品、一気に読んでしまった!ページをめくる手がもどかしいという読書体験を味あわせてくれることは請け合い。もちろん私ごときが請け合わなくても宮部みゆき(1960-)のプロの作家としての腕は実証済みである。

 6月2日、大安の日曜日の宵、ホテルの地下駐車場にベンツを乗りつけた人目を引く美人、関沼慶子。手には重そうな楽器の入っているようなケースを提げてエレベーターに乗り込む。結婚式場のフロアのパウダールームの個室で取り出したのは、散弾銃だ。裏切られた元恋人、国分慎介の披露宴に招かれざる客として乗り込んだ慶子はいったいその銃で何をしようというのか?

 いきなり読者を引きつけて離さない始まり方である。

 そして、いろいろあって、釣具店「フィッシャーマンズ・クラブ」北荒川支店に勤め、若い連中から「お父さん」と呼ばれている織口邦男(52)、暇なときには小説を書いている同じ店の佐倉修治(21)、国分慎介の妹・範子、東京で二人暮しをしている神谷尚之・竹夫の親子などの登場人物が、東京−金沢約750kmの追跡劇を繰り広げる。それぞれの登場人物が過去を背負い、自分をこの世界で試している。巻き込まれた人物も、自分と世界との関りを試さざるを得ない状況に投げ込まれるのだ。

 いや、そんな哲学学者の言うようなたわごとはこの小説とは無縁である。

 あー、これは、日本の小説なのに、まるでスティーヴン・キングだ。ホラーでは無いが、このドキドキ・ハラハラ感と胸を締めつけるような感覚。旨すぎるぞっ!宮部みゆきは今まで多くの作家志望者をその作品で殺してきたに違いない。「あー、俺(私)にはとてもこんなふうには書けない」と絶望のどん底に叩き落してきたに違いない。

 スナーク狩りとは何か?その意味は?もちろんこれにも完璧な答えが用意されている。(スネークだとか、スナックではもちろんないことは私が保証する!)

 最後の解決の仕方に異論を挟むことはできるが、それは読者にたったひとつ残された自由意志であろう。その他すべてはこの作家のマジックによって完全に支配されている。いや、異論の余地をわざわざ残しているのも、この小説家のマジックのうちである。

 テレビドラマ化されたこともあるらしいが、誰にとっても映像化したくなる最高の原作だろう。(ただひとつ、宮部みゆきのせいでは無い難点は、そう、この作品が発表された1992年にはまだ携帯電話が普及していなかったことである。今映像化するとすれば、相当この点について脚色を加える必要があるだろう。そう、ケータイはこういう型のサスペンスの成立をかなり困難なものにしてしまったのである。)

 予定の無い休みの前の日に読み始めることを忠告しておく。


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