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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004110008 茂木健一郎 意識とはなにか −<私>を生成する脳 2003 日本 ちくま新書

評者:発起人    評価:8   読了日:2004/11/18   公開日:2004/11/18

意識と脳について徹底的に考えた本

 

 <私>とは何か?というのは永遠の謎である。過去偉大な哲学者たち、科学者たちがこの問題について考えてきた。そしていろいろな解答が提出されてきた。

 近年の脳科学の発達によって、人間の脳が千億個の神経細胞(ニューロン)と数千のシナプス結合を通じて結び合っているということがわかってきた。言わば物質レベルで<私>=意識を検討することが可能になってきた・・・と私は思っていた。やがてはこの意識、<私>という主観もそのようなレベルで解明されるに違いないと。

 ところが、この本の著者、茂木健一郎(もぎ・けんいちろう、1962-)によれば、脳科学は「実は深刻な方法論上の限界に直面している」。つまり「なぜ、脳の中の神経活動によって、私たちの意識が生み出されるのかが、皆目わからない」(p010)のである。

 これはまさに錬金術師たちがかつてどのようにして金というものが生み出されるのかという原因を知らなかったのと同様に、「脳の神経細胞の活動によって一体なぜ私たちの意識などというものが生み出されるのか、その根本原因」(p011)がわからないのである。

 物質である脳から「どのように」意識が生まれるのか?どのような条件で物質から意識が生まれるのか?等々の根本的疑問に答えられていないのである。

 著者は、このような問題意識から出発して、いったい意識の中で<あるもの>が<あるもの>であることの不思議について「徹底的に考えた」(p014)。

 著者は<クオリア>(qualia=ユニークな質感)という概念を本書で何度も使い、いろいろな角度から、次元から<私>が感じる<クオリア>について分析を加える。何度も上書きをする画家のように、この概念を使って、上述の根本的疑問を解く突破口を開こうとする。

 ひとつひとつの議論はたいへん良く理解できるし、面白い。コンピュータと人間との比較や、社会的存在として生きる人間という種の特性(=自然と闘うというよりも社会で認められるということが最大の報酬となる)など、うーむなるほどとうなずいているうちに読み終わってしまった。

 しかし最後になって、日々<私>は<私>を生成しているという議論の中で、量子力学の「波動関数の収縮」という理論を援用したりしているところが私にはピンとこないな。著者が最後にあげているブックリストで勉強するか。

 まあ、このような問題に関心がある人には「知的興奮」を誘う本だと思う。

 しかし、この茂木健一郎という人、東大理学部・法学部を卒業して、東大大学院で物理学を専攻し、理化学研究所やケンブリッジ大を経て、現在はソニーコンピュータサイエンス研究所勤務のかたわら、東工大で客員助教授という経歴の持ち主であり、考えることが大好きな人なのだろう。

 しかも驚いたことに、あの『世界が変わる現代物理学』(2004)を書いた、竹内薫(たけうち・かおる、1960-)との共著で、『トンデモ科学の世界』(1995)という本を出してデビューしている。

 さらに、この本を出してすぐに、あの養老孟司先生との共著で、『スルメを見てイカがわかるか!』(2003)という本も出している。

 養老先生が帯に推薦文を寄せている:「脳について、本気でまじめに考える。それが茂木さんの脳だ。スゴイと思う。」

 なんだか微妙な人脈(社会的関係)があるようだ。


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