感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004110007 廣松渉 今こそマルクスを読み返す 1990 日本 講談社現代新書

評者:発起人    評価:4   読了日:2004/11/17   公開日:2004/11/17

同時代からの問題意識に応えないマルクスの読み返し?

 

 もともとマルクス(1818-1883)を一度も読んだことの無い人にとっては、このタイトルからして引いてしまうだろう。

 私のように専門的にでは無いが、若い頃「齧った」程度の人間にとってはどうか。たしかにマルクスを読み返すということに意義があるかもしれないと認めたとしても、同時代(とは言っても1990年に出版されているのだが)からの当然の疑問や課題に十分に応えた著作になっているとは思えなかったのである。

 マルクスの思想の画期的な意義、とくに「物象化」してわれわれの眼に映る社会的関係の秘密を暴露したこと、永遠不変に見える資本主義制度自体が歴史的な産物であり、それはやがて止揚され、次の社会構造、搾取や国家の無い社会へと、階級闘争を通じて移行するであろうという分析・見通し等々を解説してはくれているのだが、それなのに何故今こういう現実があるのかということについては、特に2004年に読むとほとんど冗談としか思えないような答えしか、この本は与えてくれないのである。

 著者の廣松渉(ひろまつ・わたる、1933-94)の専攻は哲学。私ははじめて読んだが、物象化論や疎外論に関する著作で60年代後半から70年代前半の学園紛争(闘争)時に広く読まれたらしい。東大教授を務めた。

 独特の文体がどこか自信なさげに感じられるのも、著者が現実の変転と格闘することをどこかであきらめていたせいなのか、マルクスの読み返しという作業はそのような現実とは別のレベルにあると考えていたせいなのか?あるいはまた読み手である私の感受性・レベルの問題なのか?

 いずれにしろ、私が知りたかった答えやヒントはこの本には見つけ出せなかった。出来合いの答えやヒントを安易に求める私のような読み方自体が問題なのではあるが。


作家別一覧:  1 2 3 4 5 6 7 8

刊行年別一覧: 1 2 3 4 5 6 7 8

Home