|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004110005 | ジョン・アーヴィング | ガープの世界 | 1978 | アメリカ | 新潮文庫 |
評者:へっぽこ 評価:7 読了日:2004/ 公開日:2004/11/14
|
レスリング好きのマッチョな小説家 T ・S・ガープの一生
|
|
アーヴィングの小説はスラスラ読めてしまう。文章は軽いし、何よりも本当に物語が面白い。アーヴィングは面白い物語にこだわる作家だ。彼の作る物語はユーモアに満ちている。登場人物ひとりひとりが魅力的だ。そうしてそんなアーヴィングの書く小説の中でも、一番人気がある人物は「ガープの世界」の主人公、マッチョでレスリング好きの小説家、T・S・ガープだと言う。確かに彼は人間臭く、なかなか魅力のある人物だと私も思う。 ガープは後に有名な女性解放運動のリーダーとなる看護婦のジェニー・フィールズと、戦争で脳に傷を負って彼女の働いている病院に運び込まれてきたガープ三等軍曹との間の子供として生まれる。ジェニーが身ごもってまもなくガープ三等軍曹は死に、ジェニーはスティアリング学院の学校看護婦として働きながら、一人でガープを育てることになる。 やがてレスリングをするたくましい青年に成長したガープは、ふとしたことで小説家になろうと決意し、ジェニーと一緒にウィーンに渡り、文章修行を始める。ウィーン滞在中、ジェニーは自伝「性の容疑者」を執筆し、大ベストセラーになる。このジェニーの自伝の大ヒットがこの後の物語と、小説家ガープの運命を決める鍵となる。 さっきアーヴィングの書く物語はユーモアに満ちていると言ったが、それと同じくらいアーヴィングの物語は暴力と性描写が多い。それはそこにアーヴィングの小説のテーマの核の一つがあるからだろう。「ガープの世界」では、女性解放運動のリーダーになることになるジェニー・フィールズをはじめとして、性転換者のロバータ・マルドゥーン、レイプされて舌を無くしたエレン・ジェイムズなど暴力や性差別の問題に深く関わる人物が多く登場する。アーヴィングはこうした弱者に対する暴力や差別に敏感で、常にそれを自分のテーマとして小説に取り入れている小説家なのだそうだ。 テーマももちろん大切なことだろうが、やはり読んで気軽に楽しめるのがアーヴィングの一番の魅力だろうと私は思う。アーヴィングの小説は時々センチメンタルになりすぎたり、物語が派手になりすぎたりして安っぽく見えることもあるけれど、理屈なく面白い物語が読みたくなった時には、アーヴィングは最高だと思う。すごくエネルギーの感じられる小説家だ。(私は「ガープの世界」よりも、「ホテル・ニューハンプシャー」のほうが好きなんだけどね。) |