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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004100006 | 松本清張 | 黒革の手帖 | 1980 | 日本 | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:7 読了日:2004/10/21 公開日:2004/10/21
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華やかな夜の銀座に蠢く欲と色−悪党たちが作ってきた戦後日本のひとつのスケッチ
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戦後大衆(エンターテインメント)文学の世界に膨大な作品群を残した、松本清張(まつもと・せいちょう、1909-1992)が1980年に単行本発表した作品。「週刊新潮」誌上に1978年から79年にかけて連載された。 東林銀行千葉支店に勤めるベテラン銀行員、原口元子は、仕事の上では支店長や次長の信頼も厚く正確に仕事をこなしてきた。ところが彼女は孤独であった。また女性であるという理由から昇進などの道もあらかじめ閉ざされていて、煙たがられる存在だった。 元子はあるとき決心をする。そして3年間かけ、仕事で知った秘密を利用して、堂々と7千万円以上の金を横領してしまうのである。顧客の秘密を逐一書き込んだ「黒革の手帖」に書き写し、それを盾に銀行からの追求もかわしてしまうのである。 元子はその金をもとに、日本の水商売の頂点に立つ銀座に小さなバー「カルネ」を開店する。「カルネ」とはフランス語で手帖という意味である。うだつの上がらない銀行員生活を捨て、銀座に幸運の足がかりを与えてくれたのは、世間や国税庁に明らかにできない顧客の金の秘密を元子が握ったからである。 元子は次に、「カルネ」に勤めるホステス波子のパトロンである産婦人科医の楢林から第二の「黒革の手帖」=恐喝材料を手に入れる。波子は楢林から捨てられ、元子は5千万円を手に入れる。 そして「第三の手帖」は?ターゲットは、医進専門予備校を経営している橋田である。元子の夢はどんどんふくらみ、銀座でも超一流のクラブ「ルダン」を買い取るために橋田を追いつめる計画を実行していくのだが・・・。 政治家秘書、警察出身の大物総会屋、クラブの経営者・ホステス・従業員、銀行員、脱税や跡取を医大に入れることに血眼の儲け主義の医者、弁護士たちが、言わば孤立無援の素人の元子を中心に蠢くのである。 元子の夢は実現できるのか?元子もまた罰せられるのか? かつては巨大な社会悪や歴史的事件の謎に迫っていた大巨匠も、この晩年の作品では、巨大な悪のピラミッドの底辺からちょっと登ったあたりの、悪党同士のバトルを描いているという点で、あまり覇気が感じられない。 銀座という戦後日本企業社会とそれを取り巻く連中の社交場、陰謀と怨念が渦巻く場所をちょこっと書いてみたという感じか。 文章も繰り返しが多いし、やたらと細かいお金の計算が出てくるし、登場人物も紋切り型である。 にもかかわらず、理屈になっていないが、やはり清張は偉大であったのだと読めばわかる。(戦後日本のバルザックか?) あるいは、今私がこれを書いている10月21日午後10時ごろに、この作品を原作としたTV朝日開局45周年ドラマを見ている人にも(多分)わかるのではないだろうか。 (あー、これは日本シリーズのTV中継が長引いたため放送が1週間飛んだようだ。10/29追記) |