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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004100004 | ドナルド・E・ウエストレイク | ジミー・ザ・キッド | 1974 | アメリカ | 角川文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2004/10/15 公開日:2004/10/15
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ドートマンダー・シリーズ第3弾−今度のプロジェクトは誘拐だ!
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「本の虫クラブ」に1年4ヶ月ぶりに登場する米国ミステリ界の巨匠、ドナルド・E・ウエストレイク(1933-)のドートマンダー・シリーズの第3弾である。 前作『強盗プロフェッショナル』(1972)では銀行を丸ごと盗むというプロジェクトに取り組んだジョン・アーチボルト・ドートマンダーと仲間たちの今回のテーマはずばり誘拐である。しかも子供の誘拐である。(誘拐した子供の名前がジミーであり、本書の題名の由来でもある。) ほとんどが現在親であり、親で無くても親に保護されて育った子供だったことがある人間で構成されているこの社会では、この犯罪に対する評判は最低である。子供の誘拐犯は死刑を免れても普通は刑務所の中で「事故死」するのである。 しかし、そこはドートマンダーである。陰惨さのカケラも無い珍妙な誘拐劇が進行する。 そこで、すべてのプロジェクト・リーダーたちに、私、発起人がこの小説から何を読み取るべきかその核心を前回に引き続き、伝授しよう。(前作からの続きだからCから始まるよ!) C マニュアルに頼るな! マニュアル人間という言葉が否定的な意味合いで嘆かれ出してから久しい。これは当然である。原子力発電所の運転やシステムの計画停止、あるいはマクドナルドでの店員の応対などマニュアルが無いと危なくて困るという仕事はもちろん存在する。 しかし、誘拐のようにどのような不測事態が発生するかわからないプロジェクトにおいて、成功例やマニュアルに頼ることはもっともしてはならないことである。そもそも誘拐はマニュアルができるほど成功例が多くは無いのである。 D ライバルのプロジェクトを軽視するな! マニュアルに頼っても、そこは優秀なリーダー、ドートマンダーのことである。途中で状況を読み取り、マニュアルから抜け出す決意を固める。しかし、同様にライバル(この小説では当然警察やFBI)連中もマニュアルに頼り、状況を読み違えるのである。このとき、いち早く敵の状況判断を見抜き、機敏な対応を取ることができるものがプロジェクトを成功に導くのである。 E 世界の多層性・複雑性・無限性を知れ! さまざまな困難をとにかく乗り切り、プロジェクトの最後の段階まで到達した。しかしリーダーたるもの、下には下があるように上には上があるのであり、みずからのプロジェクトが絶対考慮できないレベル・次元が世界には存在するということを知らなければならない。たとえば、ドートマンダーはニューヨーク界隈の犯罪仲間からはリーダー扱いをされているが、彼がおそらく永遠に到達できないレベルが存在することは理解できなかった。それと同様にあらゆるプロジェクト・リーダー、マネージャーも到達できない次元が、それがどこにあるかはわからないけれども、大前提として存在するということを肝に銘じて課題に取り組むべきである。(別にプラトンのイデア界の話をしているのでは無い。) さて、おわかりであろうか? プロジェクト・リーダー必読の書であるばかりでなく、世界の成り立ちに哲学的疑問を持っているあなた、罪と罰、リターンとリスクについて考えているあなたにとっても有効な示唆を与えてくれる快作である。 ただし、真剣に誘拐を考えているあなたにとっては、たとえばここで描かれているFBIの捜査方法の古さひとつだけでも、最悪のマニュアル本になる可能性が高いため、私としてはお奨めできないことは明記しておく。 |