感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004100003 山本雅男 ヨーロッパ「近代」の終焉 1992 日本 講談社現代新書

評者:発起人    評価:6   読了日:2004/10/08   公開日:2004/10/08

明るく軽い「近代」批判 - 絶好の歴史入門書

 

 冷戦が資本主義の勝利のもとに終結したころに書かれた本である。だからと言って著者の山本雅男(やまもと・まさお、1950-)の視点はそんなに短期的なものでは無い。

 「近代」という概念、それを生み出した「ヨーロッパ」(これはもちろん地理的ヨーロッパという意味では無い)という概念の発生・変遷を辿り、その限界と意義を上手にまとめている。

 日本人にとっても憧れであり、追求・超越すべき対象としてあった「近代」と「ヨーロッパ」が現在、個人を規格化・抑圧し、地球環境を破壊する役割を担っているという認識は、目新しいものではもちろん無い。しかし、これだけやさしくすいすい読める本としてまとめられた例も少ないのではないだろうか。

 いい意味でも悪い意味でも軽いのである。深刻な、時には血で血を洗うような思想的な葛藤を経てきたというようなところがこの著者には感じられない。明るく静かなキャンパスの教室で、ときどき冗談を交えながら学生に単位を与えることだけを目的として存在している博識でやさしい教授の話を聞くという感じなのである。

 決して皮肉では無く、社会科学や歴史になじみの薄い人たちにはうってつけの入門書である。「進歩史観」というか単線的歴史観への反省を確認するという意味でも読んで損は無い。(ブックガイドを兼ねる参考文献一覧もついている。)

 しかし、ほんとうにいいのかな?「近代」を支えてきた根底にある合理主義や二者択一的思考法、数量化などは、でも悪いからやめてしまえという訳にはいかない。「ファジー理論」や「ジェンダー」をめぐる議論も紹介されているが、山本教授はいったいどう考えてらっしゃるんですか?と「厳格主義」(リゴリズム)に冒され気味の私などは問いただしたくもなるのである。

 この本が出て12年経過した。湾岸戦争のときに、ペルシャ湾の水鳥たちが油まみれになっている映像について、「人間中心主義」批判の観点から著者は紹介している。「人類の愚かさと傲慢さ」(p180)だと。しかし、この映像がアメリカの情報操作による映像であったことは今では周知の事実である。

 このように私たちは騙されやすいのである。一般に流通している「近代」、「ヨーロッパ」の観念に騙されないためにはどうすればいいのか?近代・ヨーロッパへの反省の視点をもまた疑い、相対化していくということが必要であるということだろうか?


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