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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004090001 | 熊谷達也 | 邂逅の森 | 2004 | 日本 | 文藝春秋 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2004/09/02 公開日:2004/09/02
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マタギの人生を真正面から描いた直木賞受賞作
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見事、第131回直木賞を、奥田英朗 『空中ブランコ』とともに撃ち取った、熊谷達也(くまがい・たつや、1958-)の作品。 連載が『別冊文藝春秋』誌上であったという猟場の良さはあったことは差し引いて考えても、なかなかの力作であることはたしかだ。なにしろ、456ページもあるし、税込みで2100円もする。 このサイトを始めて、「本の虫」などと標榜しているのだから、せめて、直木賞・芥川賞受賞作ぐらいは押さえておきたいという気持ちから、以前なら文庫本化されても手を伸ばさなかったであろう作品も読むように心がけているが、 中には何でこれが?という本もある。 この作品、話題性という点では地味ではあっても、主人公の松橋富治(まつはし・とみじ)の生き方と同様、真面目に真正面から小説に取り組む姿勢は好感が持てる。 富治はマタギである。マタギとは、私もこの小説を読んではじめて知ったのだが、東北地方の山村に住む人たちで、主に冬場、山中に分け入り、クマやアオシシ(=ニホンカモシカ)などの山に住む動物の狩猟で生活している。故郷を離れて別の場所へ「旅マタギ」に出かけることもある。 富治が生まれ育った、阿仁地方(秋田県)のマタギは、頭領(スカリ)の指揮のもと、狩猟組という集団単位で、役割と掟(とくに「山の神」信仰)にしたがって行動する。 富治は明治23年(1890年)に、荒瀬村打当(うつとう)に生まれ、この地方の男の子がほとんどそうであるように、一人前のマタギになることを当然のようにして育ち、順調にマタギとして成長する。しかし近隣の比立内(ひたちない)の有力者の娘・文恵と恋仲になったことをきっかけに富治は故郷を追われ、銅山の採掘夫として数年間生活するが、結局は別の場所でマタギに戻るのである。 マタギの世界、銅山の世界、そこで富治が出会う人たちが生き生きと描写され、厳しい自然との闘い・共生、喜びや苦悶が戦前の(軍用・輸出用)毛皮ブームや銅価格の上昇などの経済・社会の変化を背景に語られる。 迫力ある猟の場面の数々とくに最後のクマの「ヌシ」との闘いは圧巻である。夜這いや祭りでの相手探しなどの当時一般的であったらしい性風俗の描写も面白い。 従来の歴史や小説ではなかなか正面からテーマに取り上げられてこなかった人たちの暮らしや思いを、切れのある文章と取材に基づいた想像力で極上の読み物に構築した作者の腕は確かである。21世紀の新田次郎か?映画化必至か?(邂逅の意味、わからなかったら辞書で調べようね!) |