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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004080002 有栖川有栖 ダリの繭 1993 日本 角川文庫

評者:発起人    評価:5   読了日:2004/08/06   公開日:2004/08/06

2時間ドラマ型トッピングミステリー?−偶然が多すぎる

 

 シュールレアリズムの巨匠、サルバドール・ダリ、私も詳しくは無いが、ほら、ぐにゃぐにゃに溶けた時計とか、本人の細くて上に跳ねた長い髭なんかは有名だよね。

 そのダリに心酔していた、中堅宝石チェーンのオーナー社長、堂条修一が神戸の別荘で殺された。死体には堂条社長のトレードマークだったダリ髭は無く、愛用の「フロートカプセル」(ダリの繭)と呼ばれる瞑想と癒しのための液体に浮かんだ状態で発見されたのだ。

 関係者のひとりが昔の仕事仲間だったこともあり、捜査に関わることになった、推理作家の「私」(有栖川有栖)は、大学の社会学部助教授で「犯罪フィールドワーク」と称して警察に協力してきた実績のある火村英生とともに事件の不可思議な謎に挑んでいく。(この火村ー有栖川のコンビがどうやらこの作家のホームズーワトソンであるらしい。)

 堂条社長の弟や、会社関係者が次々と捜査線上に浮かぶ。果たして火村は真犯人と事件の謎を解き明かすことができるのか?

 この有栖川有栖(ありすがわ・ありす、1959-)の作品、合間合間に芸術家サルバドール・ダリの生涯、宝石に関する知識、犯罪論などがトッピングのように適当にちりばめられていて、意識していると思われるエラリー・クイーンほどでは無いが適度にお勉強にもなる。しかし、悲しいかな、この謎自体はかなり凡庸であると私は思う。

 最後にもう一捻り欲しかった。この終わり方ではまるで二時間ドラマでは無いか、わざわざダリなんか持ち出すまでも無いというか、トッピングで一番味わうべき中身(まあラーメンで言えば麺とスープか)を結果としてごまかしているという感じか・・・。

 食べ歩き番組のリポーターにならって言えば、

「うーん、(もぐもぐ、つるつる)・・・おいしい!特にこの豪華なチャーシューにメンマ、これだけでも満足しちゃいます・・・うーん」、という感じか?「これだけの具が載っていて660円はリーズナブル!」

 いや、ミステリーとしてはある程度の水準には達しているとは思うのだが、やっぱり華が無いなあ、大学のミス研的地味さ、まじめさが邪魔をしているのか?

 そもそも、この作品、舞台は大阪や神戸中心で、ワトソン役の有栖川は大阪弁を話すが、火村は札幌生まれらしく標準語。登場人物は大阪弁を話したり、標準語を話したり、バラバラである。ここまで大阪にこだわるなら、どうだろう、いっそ地の文も大阪弁にしてみては?大阪弁に翻訳するという手もあるかもしれない。

 それから、このペンネーム、そろそろ変えてみてはどうだろうか?ついこの間、たしか有栖川宮家を詐称して詐欺を働いていた奴が捕まったが、そのとき「同じペンネームの作家」としてマスコミに登場していた。しかもこの作家の場合、有栖川に加えて有栖なのである。それなのに本人は男である。

 私は他にはデビュー作『月光ゲーム』(1989)しか読んでいないし、作者の生真面目さのようなものは好感が持てるのだが、他の作品にしばらく触手を伸ばそうという気にはならなかった。残念。


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