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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070016 佐々木克 戊辰戦争 1977 日本 中公新書

評者:発起人    評価:6   読了日:2004/07/29   公開日:2004/07/29

江戸城開城で終わってはいなかった−敗者の側から見た日本内戦

 

 現在、NHKで放映されているドラマ「新選組」、どう終わるのかは知らないが、事実としては、新選組局長近藤勇は、官軍が江戸に向かって進撃を続けているときに、「甲陽鎮撫隊」なるものを率いて、甲斐の国(山梨県)に入り、官軍に簡単に敗北、その後たしか板橋あたりで捕えられ、処刑されている。

 副長の土方歳三はその後も旧幕派について北関東などを転戦、後に蝦夷に渡り、この一連の内戦(=戊辰戦争)が終結した函館攻防戦において戦死している。

 いや、この本は別に新選組をテーマにしているわけでは無い。(というか新選組は近代装備の戦争ではほとんど活躍の場はなかったのである。例外は指揮官としての土方だけか。)

 戊辰戦争の全貌を、著者の佐々木克(ささき・すぐる、1940-)は自らの出身地でもある東北地方の視点、すなわち敗者の視点から描いた。

 ざっと、おさらいをすると、最後の将軍・徳川慶喜(よしのぶ)による大政奉還→王政復古クーデター→鳥羽・伏見の戦い→慶喜の江戸への逃亡→官軍の江戸への進撃→江戸城開城→関東から東北地方各地での戦い→函館・五稜郭の戦い→戦争終結、という感じか。

 しかし江戸城開城の後戦われた、東北や新潟での血腥い戦争はあまり目立たない印象がある。ハイライトシーンになっていないのである。江戸城総攻撃を前にした西郷隆盛・勝海舟の会談とか、上野に立てこもった彰義隊の戦い、軍事的にはまだまだ優勢だったのに鳥羽・伏見の戦いのあと江戸に逃げ帰った徳川慶喜などはいろいろな小説やドラマの題材になっているのに・・・。

 もっとも激烈な戦闘が戦われた東北・新潟の奥羽越列藩同盟による抵抗はあまり目立っていないのである。これは新政府が薩長を中心とし、天皇・朝廷の権威を利用・独占し朝敵としてこれらの抵抗を圧倒的な軍事力で押しつぶしその後もこの戦争の結果を自らの正統性を確立する梃子にしようとしたからである。東北地方の差別・軽視という感情を拡大あるいは作り出すことにもなったのである。

 もちろんこの江戸城開城の後の東北諸藩の抵抗にもドラマチックなシーンがなかったわけではない。たとえば会津の少年隊士が悲壮な戦いを見せた白虎隊などはドラマなどの題材になっているだろう。

 しかし、総じて言えばこのある意味では日本を二分した内戦状態について敗者側の視点に立った歴史記述は少ないようである。

 敗者の側の歴史を発掘することは常に困難なのである。著者はこの困難な試みにあえて挑戦したのだとも言えるが、もちろん新書版1冊ですべてを書き尽くすことは難しかっただろうとは思う。

 この努力には敬意を表したい。年表や地図もついていて便利である。しかしこの本ほとんどルビがふっていないので読みにくいぞ(人名とか地名とか)。全体を満遍なくカバーしようとしたせいかドラマまでは読み取れないのも残念である。(もちろんこれは歴史の本なのであるのだが・・・)


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