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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070014 森村誠一 人間の証明 1976 日本 角川文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2004/07/24   公開日:2004/07/24

一篇の詩に触発されて生まれた叙情的推理小説

 

 東京の超高層・高級ホテルの最上階レストランへ向かう直通エレベーターで発見された黒人男性、ジョニー・ヘイワードの刺殺体。彼はいったい何故そんなところで誰によって死の瞬間を迎えたのか?

 所轄・麹町署の棟居(むねすえ)刑事、ジョニーの故郷・ニューヨークでハーレム地区を担当しているケン・シュフタン刑事がそれぞれの立場と思い入れから事件を追う。

 森村誠一(もりむら・せいいち、1933-)特有の無機的な百科事典風文章と時折見られる叙情的描写の配合がこの作品ではかなり旨く効果をあげているといっていい。謎を解明する側、追われる側の視点の複数化は散漫な印象を与えるが飽きさせないという点ではエンターテインメントとしても必要なことである。

 現在フジTV系で再ドラマ化され放映中らしいが、森村誠一が人気作家としての地位を確立するきっかけとなった作品である。

 1976年に単行本として発表され、翌年松田優作主演で映画化(&文庫化・ノベルス化)された。

 書籍(文庫)+映画+テーマ音楽+大規模宣伝+スポンサー(投資家)で角川商法の、いや現代にいたるまでの小説の商品化・マルチメディア化のモデルケースとなった。ビジネスとして結局成功したかどうか、私は知らないが、ひとつのパターンを作ったという点では画期的である。

 また、この小説では、

「母さん、ぼくのあの帽子

どうしたでせうね?」

で始まる西条八十(さいじょう・やそ)の詩が謎を解く鍵になっているばかりでは無く、物語の叙情性の核ともなっている。

 私が読んだこの角川文庫版(「新装版」じゃないやつ)には、作者による角川春樹への感謝が表明されている。また解説者の横溝正史は同じ角川商法で再評価された作家でもあることは周知のとおり。

 作者は「あとがき」で、「この作品を世に出したのは二つのめぐり逢いである。一つは西条八十の麦わら帽子の詩であり、あと一つは角川春樹氏とのめぐり逢いである。」と述べている。

 いや、だから悪いと言ってるんじゃないよ。推理小説だから詳しいプロットは書けないので、こんなところでお茶を濁しているのである。

 まあ、なんとなく、この『人間の証明』という題名からして、けっこう気合が入っている小説だと感じられるから、この小説の欠点だと思われるところも飲み込まれてしまうんだよね。これこそが勢いというものか。


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