感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070013 梨木香歩 西の魔女が死んだ 1994 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:7   読了日:2004/07/22   公開日:2004/07/23

児童文学は文学たりうるか?−倫理的高みから見下されている感覚

 

 私だって、自分は子供のときの純粋な気持ちを忘れてないよ〜っと語る(騙る)ことは可能であるし、そのようにこの感想文を書いてもよかったのである。

 暑さのせいにして言ってしまうと、この梨木香歩(なしき・かほ、1959-)の作品、大人になったときの主人公のことを描かない限り、大人が読んでも楽しめる作品にはならないという気がする。とくにオヤジには受けない、オヤジである私が保証する!(受けなくてもいいのだろうが・・・)

 だから児童文学であって文学ではないのかもしれないが、おっとっと、ちょっと言い過ぎか?こんなことを言っていると「かわいそうな人」だと言われそうな気がするし・・・。「アイ・ノウ」。

 「西の魔女」は、主人公「まい」のおばあちゃんである。二年前の春から初夏にかけて、まいはおばあちゃんの家で暮らしたことがある。そのころのまいは入学したばかりの中学校に適応できなかった。

「学校に行くことを考えただけで息が詰まりそうだった」(p13)いわゆる不登校になりかけていたのだ。そこで、ママのママつまりおばあちゃんがひとりで暮らす家に行くことになった。

 おばあちゃんは、ごく普通に恋をして、ごく普通の結婚をし、ごく普通の家庭を持ちました。でも、ひとつだけ普通じゃないところがありました。そうです。おばあちゃんは魔女だったのです。しかも、おばちゃんはイギリス人で、昔から日本のことが好きで日本に来て、先に亡くなったおじいちゃんと結婚したのです。

 まいはおばあちゃんの愛情に包まれ、また質素だが時間と手間をかけた暮らし方によってだんだん精神的に回復し、強くなっていく。

 ハーブティーの入れ方、野いちごのジャムの作り方、足で踏む洗濯、お菓子作り、早寝早起き等々。

「自分で決める」ことが魔女への第一歩だとおばあちゃんに教わたまいはこのことを肝に銘じるのだ。

 まいがおばあちゃんの家で経験した唯一の葛藤は、近所に住んでいておばあちゃんの家の修理などを手伝ってくれている「ゲンジさん」という男。この男、まいに徹底的に嫌われる。私なんかから見ると、どうでもいいことが原因なんだけどね。

 あれから、2年、今では昔は単身赴任をしていたパパもいっしょに、ママ、まいは別の町で一緒に暮らしている。

 そこに知らせが届く。「西の魔女が死んだ」。はたしておばあちゃんはまいへの約束を守ってくれたのか?

 この作品、「新潮文庫の100冊」に入っているぐらいだから人気はあるんだろう。こんなおばあちゃんがいて、自然に囲まれた家があり、自然と「共生」し、効率だけではないしっかりした暮らしができればいいなとうらやましくは思う。

 しかし、私個人がそのようなインフラ(という言い方は失礼か?)を授かっていないためか、まい、大人になってぐれてないか?ちゃんと魔女になる修行はやってるのかと思ってしまうのである。(あー、また現実とフィクションを混同している。)

 その後のまいが登場する「渡りの一日」(1996発表)も収められているが、これはまあその後は元気ですという程度の話なので触れずにおく。


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