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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070010 つかこうへい 蒲田行進曲 1981 日本 角川文庫

評者:発起人    評価:9   読了日:2004/07/19   公開日:2004/07/20

銀ちゃん-小夏-ヤスの歪な三角関係 - 日本的人間関係を風刺した直木賞受賞作

 

 つかこうへい(1948-)のあまりにも有名な作品。第86回直木賞受賞作。

 もともとは、劇作家・演出家として有名になった著者は、この作品も最初は演劇作品として発表・上演(1980)している。これを自ら小説化したものがこの作品であり、後に同名映画(1982、深作欣二監督)の脚本も書いている。

 本作の主要登場人物は、スターの銀ちゃん、大部屋俳優のヤス、女優の小夏である。小説では、前半がヤス、後半が小夏を語り手としている。場所は基本的に京都の太秦撮影所とその周辺。

 ヤスはとにかく銀ちゃんのためになるのならなんでもやる、銀ちゃんを引き立て、輝かせることなら、撮影で切られ、殴られるのはもちろん、仕事を離れても銀ちゃんに肉体的にも精神的にも虐待されるのを甘受する。虐待されることに悦びを感じている。

 ついには銀ちゃんが付き合っていたちょっと売れなくなってきた女優の小夏をお腹の赤ん坊ともども、押し付けられてしまう。小夏は最初は嫌がっていたのだが、ヤスの誠意にほだされてか、既成事実の積み重ねのためかヤスと結婚し、子供を育てる気にだんだんなっていく。

 ところで今までは銀ちゃんを輝かせることだけを自らの生きがいだと感じていたヤスは、銀ちゃんの初の主演作となるはずの映画「新撰組」の池田屋事件での「階段落ち」のシーンに命を賭けて取り組もうとしていた。

 ここでは、このシーンの撮影の日だけは、ヤスが主演なのである。ヤスはこの日が近づくにつれて、最初は押し頂くようにしていた小夏にあたりちらし始める・・・。

 小気味良い会話の応酬と面白いエピソードの積み重ねで、なかなか感じていても描けないし、普段は意識もしていない日本のドロドロした権力・家族・社会関係、被虐・加虐、差別・被差別の関係を拡大してくっきりと、しかも楽しいエンターテインメントとして見せる作者の技はさすがである。

 もちろん、それに抗議するわけでも、変革を呼びかけているわけでもない。むしろこのような関係に沈潜して楽しんでいるような日本人を憐れんでいるのかもしれないが、私にはこの3人の登場人物を心底から笑い飛ばせるだけの自信は無い。


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