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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070008 連城三紀彦 恋文 1984 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2004/07/16   公開日:2004/07/17

うまいっ!うますぎるっ!小説の職人芸だっ!

 

 知る人ぞ知る、どちらかと言えば地味な作家という印象のある、連城三紀彦(れんじょう・みきひこ、1948-)の短編集、といかにもよく知っているような書き方をしたが実は私はこの作家、はじめて読んだ。

 表題作「恋文」は昨年TBS系で連続ドラマ化されている。私の読んだ新潮文庫版の帯には「10/8(水)〜スタート 毎週水曜日 夜10:00〜」とある。

 そうだった、このサイトのアクセス数を増やそうとドラマ化・映画化された作品ばかりを集めていたときに買ったのだった。しかし、読むチャンスを失い、本の山に埋もれていたのを発掘したのだ。

 「恋文」のほか、「紅き唇」、「十三年目の子守唄」、「ピエロ」、「私の叔父さん」の計5作が収められている。それぞれが独立した短編なので、連続ドラマのほうはかなり自由に膨らませたのだろうか。

 ひとつひとつのあらすじを書いても意味が無いと思うので(あらすじを知りたい方は、「解説」で荒井晴彦という脚本家?が梗概のように丁寧に各篇についてあらすじを書いているので、そちらをどうぞ)印象を記しておきたい。

 思いやり、愛情、慰め、夢、戻らない過去への郷愁などの感情が、小説でしか描けない(と思う)描き方で心に迫ってくる。言葉の選び方が難しくはないのに秀逸である。しかも、これが愛情ですよ、とか癒しでございますというようなわざとらしい迫りかたでは無い。随所に、ミステリ作品でデビューした作家らしく、自然に花が固い蕾からまったく別の姿を見せてくれるような驚きも与えてくれる仕掛がほどこされている。

 うまい、うますぎるぞっ!いぶし銀の職人芸である。言葉だけで、作者は完全に言葉の後に自らを隠して、こういう仕事をやってのける、これこそ小説である。

 誰とは言わないが、小説自体での勝負よりも、作者のイメージ戦略で読者を集めるというような、大量生産商品を売る企業のようなマーケティング戦略でビジネスをしている、ほら、そこの龍とかひとみとか、ちっとはこの作家のつめの垢でも飲んだらどうなんでぇいっ、べらぼうめっ!

 この作品集は、ちょうど20年前の直木賞受賞作でもある。

 超トリビアではあるが、おもしろいので書いておきたい。私の持っている、新潮文庫版(29刷)、表紙を開けると現れるほら、この右側のカバーの部分、なんていうのか知らないが、そこに写真付の著者紹介がある。

「連城三紀彦 Renjo Mikihiko 1948(昭和23)年、愛知県生まれ。」以降ずらずらと受賞作や代表作が紹介され、

「'96年、本作『隠れ菊』で柴田錬三郎賞受賞。」とある!

 うう、中身は完全に『恋文』なのに、著者紹介は『隠れ菊』のやつをそのまま使っているな、脇が甘いっ!(→新潮文庫の編集部)職人芸作家に失礼であろうっ!


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