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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004070005 | ディック・フランシス | 罰金 | 1968 | イギリス | ハヤカワ・ミステリ文庫 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2004/07/12 公開日:2004/07/14
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人は何故不利を承知で闘うか−小説だからか?やせ我慢の美学か?
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競馬騎手出身のディック・フランシス(1920-)の競馬に題材を取ったミステリーの第8作。米国MWA(全米推理作家協会)最優秀長編賞を受賞したらしい。 本編の主人公&語り手のジェイムズ・タイローンは競馬担当記者である。私は競馬はやらないが、英国では長い伝統を持つ娯楽・ギャンブル・スポーツとしてその地位は高いらしいことは知っている。 つまり、大きな金や利権が動く世界であって、詐欺行為をはたらいて大もうけをしようとする犯罪者とそうした不正を監視し取り締まるシステムとの闘いも伝統と歴史があるということだろう。 このようなシステムの一環としてジャーナリズムも存在し、しかも部数拡大を巡って激烈なスクープ合戦を繰り広げる。(別に競馬場のチケットを配って新聞を拡販したりはしないよ。) ある日、記者仲間のバート・チェコフが自社の7階にあるオフィスからガラスを突き破って飛び下り自殺する。その直前、彼は「私」(タイローン)に「絶対に自分の署名記事を、金で左右されてはならんぞ」と「忠告」していた。 バートは、いったいどんな記事を書いていたのか?調べて見ると、浮かび上がってきたのは大きな不正行為と背後にいる犯罪者の影だった。 タイローンは自分の属する「ブレイズ」紙の同僚記者の協力をえながら、しかし基本的にはひとりでこの犯罪者・不正行為と闘いを開始する。しかし、彼には大きなハンディキャップがあった。彼の妻、エリザベスが難病のため身体の90%は自分で動かせず、特殊な機器無しには呼吸もできない状態にあったのだ。 不正行為追求を始めたタイローンに敵は暴力で「忠告」し、彼の「弱み」を脅迫する。しかしタイローンは闘い続けるのである。 この主人公、かっこ良すぎ。しかも肋骨を折られても初志を曲げない記事を書き、敵の攻撃をかわすアイデアを着々と実行する。やせ我慢の美学である。(ダイエットで飯や酒を控えているというわけではもちろん無い。) 敵の正体は?タイローンは新たな不正を阻止できるのか?エリザベスに敵の手は及ぶのか? 競馬を愛する人はもちろん、競馬のことを知らない人でも、手に汗握り、主人公と自分を同一化できる傑作。登場人物たちが「・・・なのだ」調で話すのがちょっと興ざめであり、女性読者の中には男のご都合主義を合理化しているところがあると感じる向きもあるかもしれない。しかし、どんな逆境にあっても、暴力や不正に対して智恵を絞って闘う主人公の姿はかっこいいと私は思ったのである。 暴力や不正の影や噂だけで怯んでしまうような私を含めた弱い人たちも、少なくともこの小説の中では溜飲を下げることができるのではないだろうか? |