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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004070003 山口二郎 戦後政治の崩壊 2004 日本 岩波新書

評者:発起人    評価:6   読了日:2004/07/06    公開日:2004/07/06

見事な戦後政治と小泉政治の分析−でも頼り無い将来展望

 

  参議院選挙も近づいているというわけで、手に取った、政治学者(専攻は行政学だそうだが)で北大法学部教授の山口二郎(やまぐち・じろう、1958-)のこの一冊、戦後政治とはどういうものであったのかという分析はなかなかおもしろい。

 たとえば、戦後の自民党政治で支配的であった、「リスクの社会化」(=病気や老後などのリスクを社会全体で負担するという方向。実は都会から地方への資源再分配だったが)+「裁量的政策」という方向性が小泉政権になってどう変わったか?

 官僚や政治家の「裁量」(したがって利権・腐敗が横行する)にかわって、「普遍的政策」+「リスクの個人化」(=「自己責任」路線というか成功したものが報われ、賞賛される社会)をスローガンに掲げたのが「自民党をぶっつぶす」と言った「構造改革路線」の方向性であった。

 しかし、小泉改革と伝統的自民党政治(あるいは族議員あるいは抵抗勢力)は早々に妥協してしまい、「裁量」は残したままで、「リスクの個人化」は進めるという方向が、小泉政権の基本的な方向性になってしまったのである。

 著者がそれに対して提示するのが、「リスクの社会化」+「普遍的政策」という組み合わせである。(西欧の社会民主主義政権の方向性に近い。)

 なるほど、そういう風に見るとスッキリ理解できる。

 しかし、将来の展望ということになると、著者の提案はまことに心もとなく感じられる。政治はどんなに民主的な政治でも畢竟権力闘争であり、これは背後に血で血を洗う利害対立を根に持っているのでは、と思っている私には、著者の将来展望は甘すぎないかと感じるのである。

 また、なにしろこの国の国民は一度でも「お上」に逆らったことが無いのである。「パブリック・コメント」制度の活用とか言っても、そんなものに意見を述べるやつなどいないのである。

 新聞の投書欄でも政府や与党に反対する意見を述べるような人は「団体職員」か「70、80代の戦争体験者」か「文筆業」だけである。会社員が「イラク派兵反対」だと本名で書いてリストラされずにいられるほど、この世の中民主的にはできていないのである。企業ではずっとそうだったし、それが学校や教育にも及んできているらしい。

 すでにフツーの市民というか国民にとって、表現の自由など無いに等しいのである。実質的に表現の自由があった時代があったのかどうかさえ怪しいものであるが・・・。

 そんなことは著者もよく知っているはずであるが、そういうデモクラシーの基本的なところでの腐蝕をこそ正面に据えて展望を描かないと、それこそ画に描いた餅になってしまうよ、という気がする。

 著者は、まだ社民党が社会党であった90年代のはじめ頃、不毛で硬直した護憲路線はやめて「創憲」という路線をとるべきだと当時の社会党に提言したという。その後この言葉だけは現在の民主党に引き継がれているが、要するに自衛隊の存在と安保条約は既成事実として認めた上で憲法の精神を実現していくためにどうすればいいかという主張だったようである。

 「創憲」をどうこう言うつもりは無いが、すでに、こんなに酷い状況になっているというところから出発するというリアリズムの視線が本書には欠如しているような気がしてならない。私のような政治に無縁の一小市民でさえ、そう思うのである。

 さて、日曜日の選挙、どうするか?どうなるか?歯止めをかける最後のチャンスか?


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