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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004060001 | 谷川健一 | 魔の系譜 | 1971 | 日本 | 講談社学術文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2004/06/04 公開日:2004/06/04
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死者が生者を、敗者が勝者を支配する魔の国の歴史
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えっ?いったいどこの国の話って、わが日本のことである。 私にとって、よくわからない学問分野である、民俗学。この本の解説を書いている宮田登という人によれば、柳田国男、折口信夫(しのぶ)、南方熊楠、渋沢敬三が日本民俗学の「四本柱」であるが、本書の著者、谷川健一(1921-)は本書、『魔の系譜』(1971)において「谷川民俗学」の原点を打ち立てたそうである。 谷川健一によれば、日本は死者が生者を支配する国である。 その最も顕著な例、政治的闘争に敗北した崇徳上皇は讃岐に流され、怨みの内に死に、死後は怨霊となり、それ以前に同じような目に会った死者たちとともにこの国を呪い続けたというのである。明治天皇の勅使が戊辰戦争前に讃岐に遣わされ、簡単に言えば「是非怨みを解いて都にお戻りください」と御陵の前で述べている。旧幕府軍との戦いを前に700年以上も前に亡くなった崇徳上皇の怨霊がたたらないようにという慰霊を行っているのである。 「怨霊への恐怖は宮廷の伝統となりつつあったのである。」(p73)崇徳上皇を筆頭に怨みのうちに亡くなった天皇・皇族・貴族は数多い。これらの敗者は死後怨霊となり、地下に住み、あるときは空を翔る魔王となって日本政治を左右し続けたというのである。 そう言えば、たしか野中広務元自民党幹事長が、国会に落雷したときにテレビのインタビューで「小渕さんがお怒りになっている」という趣旨の発言をしていたのを思い出す。今でも政治家たちは怨霊を恐れているのか? このほか、天狗、かくれキリシタン、沖縄のユタなどの霊能力者など、谷川健一は日本歴史の裏にあって、民衆や政治的支配層の行動を左右してきた「魔の系譜」を辿り、従来無視されてきた「死者による支配」という日本に顕著な側面を明らかにした。 豊富な実例、博識に支えられた思考の飛翔(飛躍?)は学術というよりもむしろ文学の世界かという感じもするのだが、これが民俗学の長所でもあり短所でもあるのだろう。じっくり読めばああ、これは夢枕獏のあの小説の題材になっている事件だなとか、いろいろ思い当たるところもあり、後の文学(エンターテインメント系も含めて)にも多量の題材を提供した種本のひとつになっているようだ。 あるいは、逆に言えば、谷川健一は古来の文学作品や伝承、歴史書などを幅広く読むことによって魔の世界に辿りついたのか?(たびたび触れられているが著者は夢野久作の大ファンであるようだ。) そうすると、私のような浅学非才のものにはいわゆる「トンデモ本」との見分けがつかなくなってくるのであり、政権に挑んで敗れ去った菅民主党前代表を菅原道真になぞらえたりして楽しんでしまうのである。 |