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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004040004 大澤武男 ユダヤ人とドイツ 1991 日本 講談社現代新書

評者:発起人    評価:6    読了日:2004/04/13    公開日:2004/04/14

目をそらしてはいけない不快な歴史

 

 人類はとんでもないことをやってしまうのである。特に政治的な虐殺は後をたたない、それがひとつのピークに達したのがヒトラーによるユダヤ人絶滅政策だ。この本によると約600万人のユダヤ人がユダヤ人であるという理由で殺された。

 この本の著者、大澤武男(1942-)はドイツぐらしが長く、ドイツ人の義父の話が出てくるところから推測すると奥さんがドイツ人であるらしい。なぜ、わが愛するドイツが、こんな恥ずべきことをしてしまったのか?これが著者の根底にある問題意識であるようだ。

 著者はユダヤ人問題の発生の大本の原因となった古代ユダヤの歴史について概観したあと、ドイツにおいてユダヤ人がいかに偏見と差別のもとにおかれ、度々財産没収や追放、隔離のみならず虐殺の対象になってきたかを丁寧にふり返る。これらの記述に関して言えば、とくに著者はドイツの(英国やフランスなどに比べての)「後進性」が、普遍的な人権思想の定着などを妨げてきたという観点に立っているようである。うう、あのマルティン=ルターが、ゲーテが・・・反ユダヤ的な偏見・憎悪を持っていた、なんたることだ。しかも、それどころか20世紀になって、世界でもっとも民主的な憲法とされたワイマール憲法のもとで、ナチスが政権を握り、ユダヤ人への組織的な壊滅政策を実行した!

 どうしてなんだろう?しかも戦後もしばらくはこの問題はあまり取り上げられることもなかったという。(見直しのきっかけは1979年に米国製作のテレビドラマ『ホロコースト』が放映されたことにあるという。)

 人間に絶望して当然というようなこのような不快な出来事、それも自分の父・祖父などの世代の人間が少なくとも許容し、協力し、命令に従って加担していたという恥ずべき事実。

 なぜだ?と問う前に、何が起きたのか?を大きく目を見開いて知る必要がある。その意味で、日本の歴史と同じように、この「ユダヤ人問題」については繰返しになっても事実を何度も何度も思い起こす必要があるだろう。とくにナチスやヒトラーとユダヤ人の歴史は現代に生きる限り、とくに興味が無い限りはやっぱり目をそらしたいと思ってしまう歴史であるがゆえに、基本的な知識として知っておく必要がある。

 現代史、20世紀の歴史については普通の学校では時間がなくてすっ飛ばされることが多いだけになおさらである。

 本の虫クラブで過去取り上げたユダヤ人をテーマにした本は、

上田和夫 『ユダヤ人』(1986)

サルトル 『ユダヤ人』(1947)

の2点。


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