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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004030010 | 鑢幹八郎 | アイデンティティの心理学 | 1990 | 日本 | 講談社現代新書 |
評者:発起人 評価:5 読了日:2004/03/29 公開日:2004/03/30
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心理学者は科学者か?コピーライターか?
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これも密かに進行する「古い新書」読破プロジェクト。(しかも精神科医プロジェクトの一環でもある。) 今回は1990年に出版された、鑢幹八郎(たたら・みきはちろう、1934-)の『アイデンティティの心理学』。 著者は、自らの「アイデンティティ」について触れている中でこの鑢(たたら)という姓が古代の製鉄法から来ていることを発見したときのエピソードについて書いているが、それほど珍しい苗字である。このアイデンティティという言葉、今ではIDカードなどに定着しているが、この言葉を基本概念のひとつとした心理学を構築したのが、E・H・エリクソン(1902-1994)だそうである。 このエリクソンという人、非常に複雑な背景の持ち主で、ドイツのフランクフルトにユダヤ系デンマーク人の母から生れたが、父親の名前は知られていない。容貌は典型的北欧系。父親はデンマーク人だったと母はエリクソンに打ち明けたという。フロイト、そしてその娘のアンナ・フロイトとの交流から精神分析家となったが、ナチスの台頭で1934年に米国に亡命(このときに、E・H・エリクソンに改名)、カリフォルニア大バークレー校で心理学教授をしていた。しかし1950年に「赤狩り」が吹き荒れたとき、「再宣誓」を思想統制であるとして拒否、教授を辞職し、東部の田舎の精神病院で治療・研究を続けたらしい。(この本が出たときはまだ存命していた。) 著者はこのエリクソンのいた病院で研究した経験があり、エリクソンの著作の翻訳などもしている。エリクソンにかなり傾倒しているという感じがする。 しかし、この「アイデンティティの心理学」なるもの、アメリカのビジネス本などによくある、図表でごまかすタイプの「理論」とどう違うのか、素人の私にはよく理解できなかった。つまり統計的・実証的裏づけに欠けているように思われる。( デーゲン 『フロイト先生のウソ』(2000)を読んだ後ではなおいっそうそう思うのである。) 心理学者は、いろいろな症状や特徴に「XXコンプレックス」と名づけるのが好きなようである。世間的に通りがいいということもあるだろうが、有名なフロイトの「エディプス・コンプレックス」は別格としても、この本の中だけでも、「阿闍世コンプレックス」(小此木圭吾)、「白雪姫コンプレックス」(佐藤紀子)などが紹介されている。ほかにも「ピーターパン・コンプレックス」とかいうのもあったし、「桃太郎コンプレックス」(=自分の出自が明らかでは無く、父母は行方不明であるのに、鬼退治という巨大な社会的な期待を背負っていることからくる葛藤)というのは今私が作ったので、ほんとは無いがあっても不思議ではなさそうに素人には思えてしまうのである。 つまり、何が言いたいか?心理学はほんとに科学なのか?会社などで数字で責められ続けているサラリーマンのように結果を出すような研究をしろとは言わないが、流行語を作るだけならコピーライターにでもなればよかったのである。エリクソンや森有正の人生について、また現代の諸問題をアイデンティティの問題として考えてみたら、こうなりました、理解しやすいでしょう?これだけでは、プレゼンテーション技術の問題になってしまうような気がする。 エリクソン、森有正自身の著作を読まないで言うのは気が引けるのだが・・・。 |