感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004020008 松浦玲 新選組 2003 日本 岩波新書

評者:発起人    評価:5    読了日:2004/02/24    公開日:2004/02/24

近藤勇の書簡を手がかりに新選組を解明する

 

 NHKドラマで放送中だから取り上げたわけではないこともない。しかし、京大を「放校処分」になり他の大学で教えたり、「著述業」をしていたという松浦玲(まつうら・れい、1931-)のこの本、多分ドラマの色合とは異なる、まじめな歴史の本なのである。

 著者によれば、60年代から70年代に司馬遼太郎『燃えよ剣』(1964)や『新選組血風録』がTVドラマ化されブームが起きたときに主人公となったのは土方歳三であり沖田総司だったのであり、局長であった近藤勇は影が薄かった。ところがこの本は近藤が残した長文の多数の書簡を読み解くことで新選組とは何であったかを明らかにしようとしている。(NHKドラマでも主人公は香取慎吾扮する近藤勇だからね・・・。)

 たしかに人気の高い新選組、土方や沖田などのスター級だけではなく、中堅、下っ端にいたるまでいろいろな研究がなされているらしく、歴史学者だけではなく郷土史家というのかマニアというのか、そういう人たちもいろいろこの幕末の剣士たちの集団に物語を求めて楽しんでいるようなのだ。だから、そういうプロやファンの立場から見るとこの本も新しい視点をいろいろ提供してくれているのだと思う。

 しかし、私が考えたのは別のことである。それは、作者が言うように、新選組が生れたときにその思想的な核となったスローガンが「尽忠報国」であり、この意味が状況の急速な変化にともなって変わっていったということについてである。はじめ、「尽忠報国」とは「攘夷」(つまり外国を追い払うこと)であり、この点で近藤はじめ初期の新選組には思想的団結があった。しかし「攘夷」を行うべきだとされた徳川幕府はもとより、外国勢に対し最過激派であった長州をはじめ他の政治勢力が攘夷を断念したとき、近藤には幕府に攘夷を迫るという気概は消え、新選組は単に佐幕派の軍事・警察部隊となってしまった。思想的統一を失ったため、規律で締め付け、「地位」(滅びゆく幕府における)で人を集める集団になってしまった。

 近藤ひとりを断罪しようというわけではない。つまり佐幕派も倒幕派も「攘夷」を叫び、それがいつの間にか、大きな思想的な葛藤や反省も無しに「開国」→「文明開化」→「富国強兵」へと進んでいくというかたちのひとつの萌芽が近藤に見られるように思うのである。(もちろん近藤は文明開化を見ること無く死んだのだが・・・)

 これはやはり先を見る目の無さ=知的視野の狭さから来ているのだろうか?

 幕末→明治維新のときのこの「攘夷」の問題、第二次大戦のときの「戦争責任」の問題、1960年代末の「大学闘争」のときの問題などなど、日本人は節操がなさすぎるんじゃないかい?問題は解決していないのに、流されていくのが好きなんだなあ・・・というようなことを考えてしまったのである。

 でもまあ新選組は節操のあった方だったということが人気の秘密かもしれない。 


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