感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2004020006 綿矢りさ 蹴りたい背中 2003 日本 河出書房新社

評者:発起人    評価:6    読了日:2004/02/15    公開日:2004/02/15

史上最年少芥川受賞作−「人間関係」の微妙さを教えてくれる管理職必読の書

 

 今や金原ひとみ 『蛇にピアス』とともに書店のかなりのスペースを占拠してしまっている綿矢りさの史上最年少芥川賞受賞作、受賞後1ヶ月たってやっと拝読しました。

 主人公の「私」は高校一年生。クラスはいくつかの「グループ」にわかれてその「グループ」の中でいかに上手に、排除されずいじめられずできればおもしろい付き合いができる「仲間」として振舞うことが最大の関心事になっている。部活動でも事情は同じ。先生まで巻き込んで、それぞれがごく普通に(膨大な努力をして)期待される役割を演じている。

 「私」はそうした努力を軽蔑し、拒否している。中学校時代は「友達」だった絹代もそのようなグループでの付き合いに血道をあげだんだん「私」から離れていく。

 クラスにはもうひとりこうした学校内のコミュニケーションを拒否している、「にな川」がいた。理科の実験グループにわかれるとき相手がいなくて同じグループに入れられた「私」は、彼が「女性ファッション誌」を見ているのを発見する。

「・・・洒落たOLが愛読してそうなやつを、読んでる。授業中に堂々と広げている。

 負けたな。」(p6)

 私はにな川が好きなモデル系タレントのオリチャンと中学一年のとき偶然あい、数分間会話をしたことがあった。にな川にとっては生オリチャンと会ったことのある人間はとてもすごい存在なのだ。つまりにな川はオリチャンおたく(萌え?)である。

 このことがきっかけとなって、私とにな川との微妙で奇妙な交流が始まるのだが、私がにな川にとって価値があるのはオリチャンとの関係においてだけのように見える。にな川はオリチャンの世界に没頭している。にな川がオリチャンがDJをしているラジオを聞いているとき、私は抑えきれない衝動を感じる。

「 この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい。いきなり咲いたまっさらな欲望は、閃光のようで、一瞬目が眩んだ。

 瞬間、足の裏に、背骨の確かな感触があった。」(p60)

 いやー、高校生もなかなかたいへんだね。ひきこもりたくなる気持ちもわかるよ。

 『インストール』(2001)の感想でも書いたことだが、適度に違和感を覚えさせる言葉の選び方や全体の構成などバランス感覚抜群なのは変わらない。

 作者がおやじに迎合しているというよりも若者が現実的になり(おやじ化し)、一部のおやじや「業界」が自分の見果てぬ夢を若者の文学に期待しているのが現代の日本であるということか?

 さて、金原ひとみが過激路線を突っ走り、綿矢りさがいい子ちゃん風で支持を拡大、次回対決はどうなるか?2004年文学界最大の対決から目を離すな!


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