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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2004010004 | ロルフ・デーゲン |
フロイト先生のウソ |
2000 | ドイツ | 文春文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2004/01/21 公開日:2004/01/21
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心理療法がウソだとすれば−投薬・外科・遺伝子治療か?
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そう、他の誰でもない。精神分析の創始者であり、精神医学の領域を超えて20世紀の思想・文学・芸術に測り知れない影響を与えたと言われているジークムント・フロイト(1856-1939)先生のことである。 そのフロイトの批判本かと思いきや、それにとどまらず著者の科学ジャーナリスト、ロルフ・デーゲン(1953-)の矛先は程度の差はあれほぼ現代人の常識になっているほとんどあらゆる精神(心理)に関する知識・理論に及ぶ。 まずはフロイトが創始した精神分析と心理学である: 「心理学の歴史は、いっときもてはやされてはやがて説明力不足を露呈して忘れ去られる「理論」の連続である。」(p12) 「精神分析やその他の心理学のウソがしぶとく生き残るおもな理由は、それらが人間の奥深い欲求を満たすからである。・・・精神分析は「賢者の石」となる。」(p15) どうして著者はそう言い切れるのか?取材や文献から手に入れたさまざまな実験、治療効果の統計(=数字)からである。心理療法にはほとんど効果は無い、それどころか逆効果をもたらす場合が多いというのだ。気休めの「プラセボ効果を上回る効果のある心理療法はただの一つも存在しない。」(p16) それではどうして心理療法はこんなに盛んなのか?(大事故や犯罪事件のあとの「心のケア」とか最近日本でも報道されますね。)これは福祉国家が抱え込んだ大量のカウンセラー、精神医学者などが一大産業をなしているからであり、また精神分析という理論自体が批判をシャットアウトする構造を持っているからだ・・・という。 それでは「心の病」にはどのように対処すればいいのか?著者はほとんどこの点には触れていないが、「外科的治療」や「投薬療法」のほうが効果的で実績もあげていると考えているようである。 しかしフロイトを読むときのような感動(虚妄かもしれないが)をはっきり言ってこの著者の本からは得られない。「無意識」というフロイトの概念やそれに基づく理論がウソであったとしても、フロイトに替わる偶像を見つけてくる、あるいは虚妄であるとわかっていてもそれにしがみつく・・・人間はどうしてそうなのか? 少なくとも分子レベル、遺伝子レベルで人間の行動・心理のすべてが解明されることが無い限り(そうなるかはわからないが)、「治療行為」を通じて、懸命に考え、ひとつの体系を打ち立てたひとりの思想家としてのフロイトの全体を葬り去ることはできないからである。 ちなみにこの本の原題にはフロイトの名前は無く、サイコ(精神)の錯覚事典とでも直訳できるのではないか? 心理療法だけではなく、「右脳・左脳」、「トラウマ」、「多重人格」、「ストレス→病気説」、「アルファ波、ベータ波・・・」などの「常識」も槍玉に挙げられている。 |