感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003120012

佐伯啓思 新「帝国」アメリカを解剖する 2003 日本 ちくま新書

評者:発起人    評価:5    読了日:2003/12/31    公開日:2003/12/31

なんでアメリカはこうなのか?−今年最大の(私の)疑問は解決したか?

 

 9・11同時多発テロの衝撃、そしてその後の米国による対テロ戦争。わずか2年余りで世界は大きな変貌を遂げた。別に国際社会のことだけではない。

 私のような一小市民の取るに足りない生活も変わったと思う。たとえば、街角の監視カメラ、住民基本台帳。これら導入の強力な動機になったのが、自由より安全第一というそれ自体は抗弁できない論理であって世論の支持なのである。そしてこれを結果として後押ししたのが同時多発テロ以降のアメリカ政府の政策であった。

 自衛隊のイラク派遣決定も別に私は自衛隊員でもないから直接は無関係かもしれないが、小泉首相が最高司令官としてイラクに向けて飛び立つ準備をした自衛隊員に訓示を行う姿をニュースで見て、子供のころ戦争放棄、非武装という日本の憲法を習ったときの感動がまさかこんなところまで来てしまうとは、と自分の国のことで誇れることのひとつが無残にも蹂躙された思いがしたものだ。

 なぜアメリカは、「自由」と「民主主義」を世界に広めることを国是ともしてきたように見えるこの超大国の中枢部が簡単にテロの被害に会うのか?

 またなぜブッシュ政権は「対テロ戦争」を標榜し、国際的な支援や国際法上の正当性に大きな疑問符がつく状況でも(イラク戦争がそうであった)、はっきり言って野蛮な戦争を(きれいな戦争などありえないが)遂行したのか?「野蛮」に対抗するためにはさらに大きな「野蛮」が必要だということなのか?それともアメリカが大きく変わりつつあるのか?もともとアメリカはそういう国なのか?

 こうした疑問を私はかねがね抱いていた。今年最後の感想文はそういうわけで京大大学院教授の佐伯啓思(1949-)が書いた『新「帝国」アメリカを解剖する』を選んだ。

 私の疑問は氷解したか?いやますます疑問が増えてしまった。しかし過去この問題について、あるいはアメリカ政権の政策の意味などについてはキラ星のごとく引用される歴史家・思想家・政治家の発言によって従来よりは深く理解できたと思う。

 しかし、なんというか、対立する基本概念、たとえば「文明」と「文化」、「文明」と「野蛮」などをみずから定義し、その相互関係を分析したあとで最後にその対立を骨抜きにしてしまうような論議の進め方にはかなり胡散臭いものを感じたのである。(これって弁証法?)

 知識は増えるが、展望は拓けないのであって、これは藤原帰一 『デモクラシーの帝国』(2002)を読んだときと同様の感じだ。これはもちろん著者のせいではない、私の無力感(ニヒリズム?)に起因するものである。(著者によれば「アメリカニズム」と「原理主義」が現代のふたつのニヒリズムだというのだが・・・。)

 来年も、のらりくらり、中程度に元気に、いきたいと思う。

 あ゛ー、「紅白」が始まる〜!それではみなさん、良いお年を!


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