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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003120010

西村京太郎 天使の傷痕 1965 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:6    読了日:2003/12/26    公開日:2003/12/26

殺人事件の謎に隠された意外な動機と背景−西村京太郎も若かったころの社会派推理小説

 

 作家所得番付の常連、トラベルミステリーと2時間番組原作の帝王、西村京太郎(1930-)が1965年に発表し江戸川乱歩賞を受賞した作品。まだ十津川警部も登場していません。

  全国紙「日東新聞」社会部記者の田島は久しぶりにとれた休日の十一月十五日、商事会社に勤める山崎昌子とデートにでかけた。行き先は京王線の聖蹟桜ヶ丘。(この頃にはショッピングセンターなんかは無かったようです。)駅の近くにある通称三角山に登って楽しんでいたふたりは、三十五、六の心臓を突かれて瀕死の男に出くわす。そして息絶える前に男が残した言葉は「テン」。

 ダイイングメッセージである。「テン?」「♪てんてんてんまりてんてまり〜」か?「テングのしわざだ・・・」か?「天罰じゃ〜っ!」か?なんていう推理は出てきませんが・・・。

 警視庁はすぐに被害者が久松実という「トップ屋」(今ではフリージャーナリストとか言うんでしょうか?)であることをつきとめるが、どうやら久松は取材でつかんだネタで関係者を脅して金を巻き上げていたようだ。久松にうらみを持っていたハズの人物は誰だ?「テン・・・」のほんとうの意味は?田島記者も独自にこの事件を追うが・・・・。

 うーむ。意外な展開と驚愕の真犯人。そしてそれだけでに留まらず意外な動機とそこからあきらかになってくる「不正義」の存在。そしてこのような「不正義」の存在を隠蔽してしまう日本社会の構造も容赦なく明らかになっていくのである。

 この作品が書かれてすでに40年近く経過して、日本社会はすこしでも良くなったのだろうか?同じ年に出版された山崎豊子『白い巨塔(一)(二)(三)』で暴露されている医学界の腐敗そっくりの事件が今年も新聞をにぎわせていますね。『天使の傷痕』で扱われているのと同種の社会問題もこれ以降いろいろ起こっています。そしてそれを隠蔽する体質もあまり変わっていないようです。

 大江健三郎じゃないけど、絶望せずに未来のことを考えていきたいですね。

 謎ときとしては?あー、なんというかこれはちょっと痛いかなと思いました。でも謎ときと社会派的な部分がうまくバランスがとれているかなという気もします。

 それにしても、この頃の銀行、他人にも平気で口座の残高とか預け入れとか教えちゃってたんですねー。のんびりとした時代ではありました。 


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