|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
|
2003120008 |
吉村正和 | フリーメイソン | 1989 | 日本 | 講談社現代新書 |
評者:発起人 評価:5 読了日:2003/12/22 公開日:2003/12/22
|
「近代という世俗化の時代に登場した一種の疑似宗教」(p178)か?
|
|
新書でチャチャッと歴史を探るシリーズ。今回はフリーメイソンです。 とは言ってもこの有名な団体についてこの本を読んだからと言ってすべてがわかるほど甘くは無い。この組織、圧倒的に欧米のものであって、日本人でフリーメイソンに入っている人は少ないということもある。この本の著者、名古屋大教授の吉村正和(1947-)もフリーメイソンに入っているわけではなく、文献をまとめたという感じである。(ちなみに日本人にフリーメイソンの門戸が開かれたのは1950年、自身もメンバーであったマッカーサーによるという。) トルストイ(本人が加入していたかどうかは確定できない)の『戦争と平和』でフリーメイソンへの加盟儀式のシーンがあったなとか思い出したのではあるが、欧米でこれだけ多数の人がフリーメイソンであったというのは予想以上。 この本によると、文学の世界だけでも、ゲーテ、コナン・ドイル、『ガリバー旅行記』のジョナサン・スウィフト、マーク・トウェインなどが加入していたそうである。音楽ではこの本でもフリーメイソンの考えを説明するのに使われている歌劇『魔笛』を作曲したモーツァルトをはじめハイドン、リスト、シベリウス等。 現在圧倒的に会員が多いアメリカでは独立戦争のときからこの組織のメンバーが大きな役割を果たしたらしい。雷=電気の実験等でも有名なフランクリンや初代大統領で桜を切ったけど正直に告白したワシントン以後計13人の大統領がフリーメイソンであったという。さらにリンドバーグやヘンリー・フォード、宇宙飛行士から野球選手までフリーメイソン会員は多彩である。 ということは、この団体、日本人にはなじみが薄いが秘密結社とかカルト教団のような性格のものではないということになる。著者がさかんに強調しているのは、近代フリーメーソンは近代合理主義と西欧神秘主義が融合した時代の思考の受け皿としての役割を18世紀に果たしたということ。そして、近代合理主義は必ずしも西欧神秘主義と対立したものとして発生したのではそもそも無かったということも強調されている。上中流階級の親睦や情報交換を目的とした(英国の)クラブ的性格も持っていたらしい。 うーむ。欧米の歴史もなかなか分厚いというか、島国日本に住んでいる小市民には伺いしれないところがあるなあ。でもこうした感覚がさらにフリーメイソン、いや歴史一般への理解を曇らせてしまうのか?まあ欧米だって日本の歴史に理解がある人は少ないのだから、新書でチャチャッとでもいいから少しでも知ることが大切だね。 それでフリーメイソンって、結局何?と思う人は読んでみよう。著者は「あとがき」で、「近代という世俗化の時代に登場した一種の疑似宗教ではなかったかという気がする」(p178)とみずからのひとつの答えを提示している。 |