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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
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2003110009 |
マーク・トウェイン | アーサー王宮廷のヤンキー | 1889 | アメリカ | 創元推理文庫 |
評者:発起人 評価:5 読了日:2003/11/26 公開日:2003/11/26
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アーサー王時代の英国は無知・貧困・殺戮が蔓延する酷い世界だった!
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トム・ソーヤーやハックルベリ・フィンで有名なマーク・トウェイン(1835-1910)が書いたなんとも言いがたい作品。アーサー王は伝説で有名な(いちおう)6世紀のブリテン王。この騎士道とお姫様、魔法の世界にタイムスリップしてしまったのが19世紀後半の生粋の「ヤンキー」(後述)、ハンク・モーガン。モーガンはこの世界に最初は面くらい、騎士の獲物として火刑に処せられそうになるが、そこは科学技術の時代のアメリカ人。天文学の知識を使って日食を予測、アーサー王と魔術師マーリンや宮廷の連中をあっと言わせピンチを脱する。 モーガンはこの6世紀英国の世界をつぶさに体験し、その酷さに悲憤慷慨する。そしてその根本的な原因であると彼が考える奴隷制・王政そして騎士階級の廃止を決意する。そのためには産業とそのインフラ(電話・電信・電気など)、新聞、教育制度、武器と新しい人材が必要である。モーガンは「奇跡」を行うことによってアーサー王から「ボス」という称号を与えられマーリンに変わって首相格に据えられる。そして様々な冒険のかたわら、共和制樹立のための準備を行うのだが・・・。 モーガンの改革路線は現代の日本の水準と比べてもきわめて急進的なものだ。アーサー王が死んだあと、モーガンが布告した「宣言」にはこう書かれている: 「君主政体と共に、そのいくつかの付属物もまた死に絶えた。したがって、もはや貴族というものはなく、もはや特権階級はなく、もはや<国教会>もない。・・・他の権威が中絶したときの、国家というものの当然あるべき姿として、共和国がここに宣言される。」 アーサー王時代の英国として描かれた世界は南北戦争前後の米国南部の状況を風刺したものかもしれない。徹底的な人民主権論者で科学技術に全幅の信頼を寄せるモーガンの思想が作者トウェインの考えを反映してるのかどうかまではわからない。もちろんトウェインが奴隷制や君主制に反対であったことは間違い無いと思う。しかしこの小説の結末を読めば、トウェインがモーガンも相対化し、風刺の対象にしていることは明らかである。そうでないとしたら、この小説は単なる質の悪い政治啓蒙小説になってしまうだろう。だがモーガンも「アーサー王」も信じないという立場もまた上質でないペシミズムでなのではないか。(これが『人間とは何か』(1906)を私があまり好きでは無い理由でもある。) ちなみに、ルーズヴェルト大統領が進めたニューディールという言葉はこの作品から来ているという。米国でマーク・トウェインがそれほど根付いている文学者なのだとすれば、このように過激に見える政治的主張が当たり前の米国は日本とは根っこが違うということになる。 さて、ヤンキーという言葉、これはもともとはコンティカット州住民を呼んだものでのちにそれがニューイングランド→米国北部人→米国人全般というように拡大したものらしい。現代日本語で使われる「ヤンキー」という言葉がここから来ているのかどうかはわからない。 しかしこの「創元推理文庫版」、龍口直太郎という人が翻訳しているが、読みづらい! |