感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003110007

二木謙一 関ヶ原合戦 1982 日本 中公新書

評者:発起人    評価:4    読了日:2003/11/24    公開日:2003/11/24

天下分け目の戦いをドキュメンタリー風に再現

 

  1600年(慶長5年)9月15日(新暦では10月21日)、現岐阜県関ヶ原付近で徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍が激突、東軍が圧勝した。本書はその歴史的な一日をドキュメンタリー風に再現しようとしたものである。もちろんその一日だけを輪切りにしてはわかりにくいので「回想、切り返しの手法を用いて、合戦の背景をも理解できるように心がけた」(p232)という。この試みはなかなか斬新であるとは思う。

 しかしやはり一読者である私には、そう言うなら読まなければいいのだが、そんなものかなという程度の話であって、たとえば司馬遼太郎の『関ヶ原』(1966)を読んだときのような感動や面白さというものは(この小説もほとんど忘れているが)あまり感じられなかったのである。これが物語と歴史の違いなのか。いや物語と歴史の違いというのも曖昧である、とすれば私は司馬遼太郎を読んで満足しているほうがいいのかもしれない。

 この関ヶ原合戦の登場人物たちがあまり魅力的では無いと私が思っているせいかもしれない。面白みが無いのである。戦いの帰趨を決めた西軍の小早川秀秋の裏切りと吉川広家の静観についても東軍西軍双方からの働きかけがあって東軍への内通が決まっていたというのだがどちらの人物も共感できないのである。石田三成はよくできた官僚という感じでとても天下を狙えるような度量が無い。関ヶ原の戦いで東軍が勝利してその後の徳川幕府の成立と江戸時代に道を開いたことがわかっているせいもあって、つまらないのである。

 もし、小早川が西軍についていたら、などと最後まではらはらさせるようなところが無いのである。勝者である徳川家康にしても、なんというかポストや脅しをえさにあらゆる裏工作を固めきってから戦場に向かっているという点で・・・そうだったのかもしれないが魅力が無いのである。

 著者の二木謙一(ふたき・けんいち、1940-)は日本史学者で国学院大教授。NHKドラマ「利家とまつ」の時代考証なんかもしている人である。もちろんこの人が隆慶一郎のようなことをこの本で書いていたらそれは問題だろう。したがって純粋に私の好みの問題として・・・評点は4点ということにさせていただきます。歴史に物語を求め、物語に歴史を求める読者の我儘です。


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