感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003090004

清涼院流水 ジョーカー 清・涼 1997 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:10    読了日:2003/09/14    公開日:2003/09/15

ポストモダン文学の最先端か?ミステリ破壊の確信犯か?

 

 清涼院流水(せいりょういん・りゅうすい、1974年生まれ)がデビュー作『コズミック』(1996)に続いて発表した作品。私が読んだ講談社文庫版では、作者が『コズミック 流』→『ジョーカー 清』→『ジョーカー 涼』→『コズミック 水』の順で読むのがベストというお薦めなので、私もこの感想文を書いている現在、『コズミック 水』をのぞいて3冊を読み終わっている。『コズミック』の前半部と『ジョーカー』を読み終わった段階での『ジョーカー』の感想を書いておきたい。

 京都府押田市門城町に聳える陸の孤島、幻影城。1993年10月25日、物語は幕をあける。『関西本格の会』の合宿に参加している8人の推理作家(葵健太朗、虹川良、風紋字光世、魅山薫、水野一馬、柊木司、氷龍翔子、濁暑院溜水)とその家族(星野多恵=風紋字の妹、虹川恵=虹川の娘)。そしてこの幻影城の主人、平井太郎、執事の小杉寛、その息子の勝利、客室係の間宮てる、料理長の那須木武彦。さらにこの幻影城にひとりの初老の男、実は日本探偵倶楽部(JDC)第2班副班長のキリギリス(えーい、漢字は難しくて出てこないぞ!)太郎が自分探しの旅に訪れる。

 そしてお約束通り勃発する連続殺人事件。犯人は「芸術家(アーティスト)」と名乗り、濁暑院溜水が考案した『推理小説の構成要素三十項目』を網羅するかのような殺し方である。凶悪事件の多発に対応するため、総代・鴉城蒼司が1974年8月9日に設立したJDCは今や350人の探偵を擁し、1班から7班までのランクがつけられ、探偵相互間の実績に基づく競争で三ヶ月ごとに入れ替わりが行われる。この「幻影城殺人事件」も「L犯罪」(重要犯罪)と指定されたため、JDCから探偵たちが派遣され、警察からの捜査陣も協力して真相解明の努力が行われるが・・・。それを嘲笑うかのように「芸術家」は犯行を続ける。

 溜水はこの事件をリアルタイムで記録することを決意し、『華麗なる没落のために』(略称カボツ)という題名をつけてほぼ不眠不休で執筆を続ける。そのうち、登場人物たちは、いったい自分たちが現実存在なのか小説世界だけに存在する虚構の存在なのか確信が持てなくなってくる。

 傾奇(かぶき)推理の竜宮城之介と「理路乱歩」を得意技とする助手の鴉城蒼也(鴉城総代の息子)、「消去推理」の霧華舞衣と「ファジイ推理」の九十九音夢が推理合戦を繰り広げるが・・・。二転三転する「解決」と謎解きの結末と真相は?ついにJDCは「神通理気」で真相をつきとめるメタ探偵、九十九十九とその助手、氷姫宮幽弥を投入するが・・・。

 登場人物たちとこの作品世界の設定(そしてこれは『コズミック』にも共通している)がまず突拍子もなくおもしろい。(ここで「キャラ萌え」する読者も多いと推測する。)

 また忠実に「推理小説」の世界のお約束事を踏襲しているようでそれを極端に貫徹すると、逆にこういう非現実な世界になってくるよということを暴露しているという意味でこのジャンルを破壊に導く第一歩を(しかも意識的に)踏み出しているのではないかとも思える。

 しかし、多分、このような設定と手法を徹底することで実は現実をはじめて描ける、その設定・手法が従来の作家とは違っていたのだからいいじゃないかという見方も出来るだろう。私自身はおそらく舞城王太郎や西尾維新の師匠筋にあたるこの作家の世界でしばらく遊んでみたいと思う。(ちょっと言葉遊びが多いので、途中でページを繰るのをやめて考え込むことが多いのだが、それはそれで楽しかった。) 


作家別一覧:  1 2 3 4 5 6 7 8

刊行年別一覧: 1 2 3 4 5 6 7 8

Home