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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003080006

横山秀夫 半落ち 2002 日本 講談社

評者:発起人    評価:9    読了日:2003/08/15    公開日:2003/08/15

人を殺す前に読んでおきたい一冊

 

 うーっ、あいつ殺してやりたいっ!と思うことは無いだろうか?

 私などは人間ができているせいかそんなことは無いが、もしそういう気分になったときは、おそらく逃げ切れないだろうから警察に逮捕された後どうなるかということをよく考えておく必要がある。本日は逮捕後のあなたを知るために最適の一冊をご紹介しよう!

 閑話休題。(この意味がわからない人が多いって最近の新聞に出ていましたが・・・)

 現職警部・梶聡一郎(49)が妻・啓子を扼殺したと自首してきた。梶夫妻は一人息子の俊哉を7年前に急性白血病で失っていたが、啓子は2年ほど前からアルツハイマー病にかかっていた。命日に二人で墓参りをしたことを啓子は思い出せず、息子の命日を忘れるようでは生きている意味が無いと梶に懇願して殺してくれと頼んだという。いわゆる「嘱託殺人」という罪状であり、梶は事実関係については完全に自白しているから、現職の警察官の犯行であるという点を除いては、なんの問題も無い事件である 。ところが、梶の自首は啓子を殺した日から三日目の早朝。空白の二日間、妻の遺体を放置したまま梶は何をしていたのか? 梶は語らない。 これが題名の「半落ち」と呼ばれる状況である。

 物語はこの謎をそれぞれの動機から解き明かそうとする6人の男たち−取調の警察官、検事、新聞記者、弁護士、裁判官そして刑務官−の立場から描かれた6章からなっている。探偵役がリレー走者のようにこのメインの謎にせまっていくわけだが、この6人の男たちがいい。6人はそれぞれ人生・仕事に疲れ、理不尽な世界に対して屈折した想いを抱いている。この謎の解決が自分たちの問題の解決のため突破口を開くのではないかという現世的な動機から、決して職務に忠実であるという理由からだけではなく、かれらは息切れするまで突っ走り、次の男に結果として謎の解決を託していくのだ。短いセンテンス、効果的な専門・「業界」用語の使用、組織の中での葛藤・軋轢の描写。すばらしい。むしろこの6人が主人公であると言いきってもいいと、私は思う。 

 ただ、空白の二日間の謎自体については、うーん、残念!、あまりにも凡庸だと言わざるをえない。しかし、この欠点を補って余りある迫力をこの小説は持っているため、9点!

 なお、本書は「このミス」2003年版国内部門第1位に選ばれている。


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