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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
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2003070010 |
ウィリアム・シェイクスピア | リチャード三世 | 1592 | イギリス | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:10 読了日:2003/07/30 公開日:2003/07/30
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悪逆非道の暴君?運命に反抗する人間?−多様な解釈が可能な天才の初期作品
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シェイクスピア(1564-1616)なのである。もうその名前だけで恐れ入ってしまう英国エリザベス王朝時代の天才詩人&劇作家。東洋の島国に生まれ育った私の高校時代に英語をしゃべれない英語教師が400年近く前のこのお方の作品を副読本で使っ ていたぐらいたいしたお人なのである。おそらく現在まで世界中の研究者だけで東京ドームぐらいは楽に満員になるであろうぐらいこのお人については研究され尽くしているのであって、一度でもその劇を見た人、読んだ人などはもはや数えることが不可能なぐらいの数に上ることは 間違い無い。 そのシェイクスピアの『リチャード三世』(1592頃)。有名なヨーク家とランカスター家の王位継承戦争=薔薇戦争でヨーク家がいったん勝利を収めたエドワード四世(在位1461-1483)の治下、その弟であるグロスター公リチャード(リチャード三世、在位1483-1485)が主人公である。リチャードはエドワード四世の息、エドワード五世が数ヶ月王位を継いだ後、王位を継ぐが、わずか2年後にはリッチモンド伯ヘンリー(のちのヘンリー七世)を中心とした軍勢に破れ戦死した。このヘンリー七世がテューダー王朝の祖であり、ヘンリー七世→ヘンリー八世→エドワード六世→メリー女王→エリザベス女王となり、エリザベス女王の時代がシェイクスピアの活躍した時代である。だからシェイクスピアはちょうど100年ぐらい前の史実を題材にしてこの劇を書いたことになる。 史実はどうあれ、この戯曲でのリチャード三世は徹底した悪役である。あらゆる権謀術数を駆使してみずからの権力獲得と維持に腐心する。エドワード四世王の弟(=自分の兄)クラレンス公にあらぬ噂を立てて無実の罪でロンドン塔に幽閉させ、刺客を送り込んで殺害する。ランカスター家側のヘンリー六世の棺(チュークスベリーの戦いで戦死)に付き添っていたその子エドワード(同じ戦いで戦死)の妻アンを篭絡し妻とする。エドワード四世が病死すると王の妻エリザベスの弟(リヴァーズ伯)と先夫との子(グレー卿)と側近(ヴォーン)を死刑にする。さらにエドワード四世の二人の王子、エドワード五世とヨーク公リチャードをロンドン塔に幽閉、殺害させる。侍従長のヘイスティングス卿、もともとは側近だったバッキンガム公も殺される。 この劇でのリチャードは自分が悪役であること、そして悪は滅びるという運命を最初から十分認識しているように思われる。冒頭の独白でリチャード=グロスターはこう述べている: 「・・・口先ばかりの、この虚飾の世界、今さら色男めかして楽しむことも出来はせぬ、そうと決れば、道は一つ、思いきり悪党になって見せるぞ、ありとあらゆるこの世の慰みごとを呪ってやる」 しかしリチャードは頭の回転が速く、自分の敵を分裂させ、丸め込み、休む暇も無く勤勉に働くのである。そういう意味ではリチャードは運命=神に挑戦する近代的人格として描かれていると解釈できるのではないか。むしろ、リチャードに次々に騙されて殺される人たちの単純さにあきれかえるほどだ。一度はリチャードと同盟する人たちは次には排除の対象になっていくのだから、リチャードの半分も考えればわかりそうなものだがなあ!単純に神と正義を信じていればいいというものでもなかろうに。 善人は欺かれやすく、悪人は勤勉である。あるいは欺かれやすいから善人なのか、勤勉な人間は悪人に成らざるをえないのか?スターリン時代のソ連とか現代政治のことを考えるまでもなく、会社とか学校でもそんなところありませんか?小リチャード三世のような奴いませんか?そんな奴は仕事ができる奴で力も持ってる奴じゃありませんか? 私ごときに出る幕は無いのだが、このほかいろいろな楽しみ方ができる傑作であることは折り紙つき!まだ読んでない人は是非ご一読をお薦めします!満点の10点! 「なるほど、リチャードはまだ生きている。あいつこそ、地獄の廻し者、その生き残りの手先、人の魂を買って、次々にあの世に送りこむ腹だ。」(故ヘンリー六世の妃、マーガレットの科白) |