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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003070002

川端康成 舞姫 1951 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:6    読了日:2003/07/07    公開日:2003/07/07

無気力が蔓延する梅雨空のような世界−うーん、じれったいぞっ!チャッチャカ動けっ!

 

  と、またまた世界的大文豪様の作品に暴言を吐いてしまいました。

 バレエ教室を経営している波子は戦前は現役のバレリイナ、その娘品子は教室を手伝いながら他の教室で修行を積んでいますがすでに二十代中頃。波子の夫、矢木はもともと波子の家庭教師だったのだが、私大の教師などをしながら仏教美術を研究していますが、昔から生活面では波子とその実家の財産のやっかいになっています。長男(品子の弟)の高男は学生ですが、戦後の風潮そのままに両親や体制に否定的です。(矢木はそれを恐れて高男をアメリカに留学させようとしています。)

 この4人家族の周りに、波子が過去愛しており今でもビジネス面で波子にアドバイスする実業家の竹原(妻子持ち)、波子の教室を手伝っている友子(愛する妻子持ち男性一家の生活を支えるため教室を離れてしまいます)、戦前幼い品子をバレリイナとして薫陶した香山(今では「廃人」になり隠遁生活を送っているといわれていますが、この人物は想い出の中でしか登場しません)、高男の友人の美少年松坂、品子に求愛するバレエ上のパートナー野津などの登場人物が配されています。

 波子はバレリイナとしての復活と竹原を、矢木は財産と過去(芸術)の中の美を、品子は香山を、高男は反抗自体を求めているように思われますが、それぞれが求めるものはバラバラで、「家」の一体感は当然すでに存在しません。しかもこの家族が求めるものも強力な欲望に基づくものでは無いようで、あいまいで、すこしでも困難があれば欲望は放棄されるか方向を変えられてしまうような性質のようです。

 敗戦のショックと失われた時間を取り戻せないことへのあきらめが登場人物たちを支配しています。解決もなく、決定的な行動も無く、香山を求める品子の将来を最後に暗示したままこの小説は終わってしまいます。

 川端康成が自信喪失のうちに書いた小説のように私には感じられましたが、同時に戦後の一時期に通用した感覚を捉えただけではなく、意図によるものか偶然か、現在も蔓延する無気力感とも通じるものを写し取っているという見方も可能だと思います。

 でもねえ、この梅雨空のように鬱陶しく、登場人物が影のような存在に感じられ、しかも読者に迎合したようにバレエの世界や仏像に関する薀蓄を散りばめたこの小説、発起人としては6点がギリギリです。

 この作品は『朝日新聞』に連載されたものです。(1950〜1951)


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