感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003060007

ドナルド・E・ウエストレイク 強盗プロフェッショナル 1972 アメリカ 角川文庫

評者:発起人    評価:7    読了日:2003/06/12    公開日:2003/06/13

プロジェクト・リーダー必読の書−「天才」犯罪プラナー、ドートマンダー・シリーズ第2弾

 

  ドートマンダーは、犯罪プラナーといっても邪悪な犯罪はできないので殺人などは計画しない。といってもいわゆる義賊ではない。犯罪をベンチャー企業・プロジェクトのように組み立て、投資家・人材を集め、情報を収集し、危機管理策を樹立し、実行する。そういう意味でこれは企業人必読の書である。(ちなみにドートマンダーシリーズの第1作は『ホット・ロック』(原著1970、角川文庫)だからはじめての方は第1作から是非どうぞ。)

 今回のプロジェクトは改装中の銀行の臨時支店−トレイラー・ハウス−を丸ごといただいてしまおうというもの。企業人の皆さんがこの小説から何を教訓として読み取るべきか、私、発起人が解読しよう!

@ マニアを重用せよ!

 ドートマンダーは全体の統括役であるが、同時に今回のようなプロジェクトが無い場合は、百科事典の訪問販売詐欺をしている。つまり詐欺のマニアである。今回のプロジェクトに加わったビクターはドートマンダーの親友、ケルプの甥であるが、FBIを辞めたばかり(辞めた理由は、おもしろすぎるので読んでのお楽しみ)自宅のガレージで小型カセットレコーダーを何台も持ち、自分が主人公になったスパイ小説を登場人物のセリフを音程を変えて吹き込んでいるマニアである。いつもの仲間スタン・マーチはクルマのマニアであり(アジトでのミーティングではどうやってアジトまで来たか、そのルートを残らず話し終わらないと話ができない)、今回参加した「ハーマン・X」は黒人解放運動に資金援助をしているが実は金庫破りのマニアである。そしてかれらからこのマニア性を取り払うとチームの力はほとんどゼロになってしまうだろう。必要なのは専門家であり、専門家はおうおうにして変人であり、世間の人から見るとマニアなのである。

A チームの一体感は危険負担の平等=一蓮托生意識から生まれる!

 今回のプロジェクトではビクターとハーマン・Xが新顔である。特にビクターはドートマンダーたちにとって天敵とも言える元FBIエージェントである。ではどうやってドートマンダーはチームの一体感を築き上げたのか?リスク負担の平等(そして利益配分の平等)の原則の徹底によってである。プロジェクトが危機に陥ってもドートマンダーは全員に必要な役割を与え対処することを貫く。プロジェクトチームの中に家族のメンバーを加えることも役に立つ。(ケルプの甥ビクター、ドートマンダーの恋人、メイやケルプの「おふくろ」は重要なプロジェクトメンバーである。)企業一家意識である。

B 撤退の決断がリーダーの仕事だ!

 いろいろ情報収集し、専門家を集め、チームの信頼感を作っても、世の中何が起きるかわからない。すべてのことをあらかじめ予測することは不可能だ。予測できたとしても対処のための時間やリソースが手に入らないことがあるし、結果が赤字ではプロジェクトをやる意味は無い。したがって負け戦になった場合に全体状況を見渡して、チームを撤退させること−これこそがもっとも重要なリーダーの仕事である。ドートマンダーが優れているのはこの決断の的確さにある。

 さて、プロジェクト・リーダー、管理者の皆さん、皆さんのプロジェクトXが成功することを、まったく同じ字に見えるが意味が正反対のプロジェクト×(バツ)にならないように祈る。


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