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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
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2003060006 |
ねじめ正一 | 高円寺純情商店街 | 1989 | 日本 | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2003/06/11 公開日:2003/06/12
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作者の幸福な少年時代あるいは/またはその筆力に嫉妬させるユートピア小説
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詩人として有名な作者の小説デビュー作で直木賞受賞作。 時代は1960年代前半。舞台は中央線高円寺北口駅前商店街と江州屋乾物店。作者(1948年生まれ)の少年時代と思われる、乾物屋の一人息子「正一」の視線から家族と商店街の人々の姿が描かれた連作小説集。 何よりも、作者の率直で正確な筆運びがすばらしい。読者が高円寺の乾物屋の一人息子「正一」になったような気分にさせてくれるのだ。「正一」が心配すること、嫌なこと、どきどきすること、痛いこと、尊敬する人、そして手伝っている店の仕事のこと。これは何よりも真実の持つ力、そしてそれをあざやかに小説に写し取る作者の力である。 こんなに小説世界にスッと入り込めて感情移入をさせてくれるのは作者の筆力だけのためではないと言うことも可能である。この小説が出版された年、1989年はまさにバブル経済の絶頂期、うまくバブルに乗った人たちがアブク銭を掴み、乗り遅れた人たちは世を恨む。高円寺純情商店街のような「助け合い」の世界はどこを見渡してもすでに存在していなかった・・・。したがってこの小説に描かれた世界になんともいえない郷愁を感じるのだ等々。 しかし、1960年代前半は実際にどうだったのか、そんなことはもはや誰にもわからない。それなのに心洗われるような読後感を与えるということはやっぱり作者の勝ちということになるのだと思う。少なくとも、ねじめ正一は幸せな思春期を送ったんだなぁとうらやましくなった。 |