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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
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2003050018 |
司馬遼太郎 |
妖怪 | 1969 | 日本 | 講談社文庫 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2003/05/24 公開日:2003/05/25
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オヤジ系国民作家がモノノケの世界に遊ぶ
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舞台は15世紀中頃の都、京、室町幕府8代将軍足利義政の治世。だが、もともとこの室町幕府の政権基盤自体が脆弱な上、義政自身も政治は大名まかせ、戦争や打ち続く飢饉、一揆で政情は大いに乱れていた。さらに公卿出身の正室、日野富子と側室お今を軸とする義政後継の男子を宿すための争い・・・。歴史の言葉では中世的秩序が解体に向かう時期ということになるのだろう。 だが、本作で司馬遼太郎はそのような公式的歴史観や事実は当然踏まえつつも、むしろこうした政争の裏で跳梁した幻戯師(めくらまし)、モノノケ(妖怪)たちが作り上げる見事な幻・夢自体を主人公にしている。6代将軍義教の落胤だと母から聞かされて熊野山中から京に出てきた源四郎(たぶんこれは歴史上の人物では無い?)が一見主人公として配されているように見えるが、源四郎は作中ほとんど幻戯師たちに操られる存在で終わってしまう。源四郎は当時勃興しつつあった兵法(剣術)−近代合理主義の代表−を学ぶものの、とりわけお今に憑いた「唐天子」という強力な幻戯師に弄ばれる存在になってしまうのだ。 でもそれでいいではないか?司馬遼太郎はむしろ楽しそうに、幻術によって源四郎たちが体験する夢の世界、幻術師間、幻術師対人間の争いを生き生きと描く。人生を一場の夢と見る、我々現代の日本人にも常に懐かしい感じを与える世界観・ビジョンを肯定し、近代合理主義が切り捨ててきた老荘的ユートピア世界・摩訶不思議な世界、木村敏なら1=1ではない世界とでも言うかもしれない、合理主義・常識(1=1の世界)を取り巻いてさらに広大な異常・非常識な世界へと読者をいざなってくれる。 オヤジ定番の人気作家、司馬遼太郎であるが、こういう「脱力系」(?)作品のほうが意外におもしろい。(今日読んだ「こち亀傑作選」で、大原部長が司馬遼太郎ファンであることを知った。) |