感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社

2003050011

司馬遼太郎

俄−浪華遊侠伝

1966 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:8    読了日:2003/05/02    公開日:2003/05/19

ナニワの大侠客伝

 

  この本を読むまで、幕末から明治・大正時代に大阪で活躍した本書の主人公、明石屋万吉という大侠客が大阪にいたことを、いやそもそも侠客というものがどういうものであるかも知らなかった。

 歴史の教科書に代表される「表」の歴史には出てこない人物ではあるだろう。拷問に耐え秘密を守ることをいわば生業とし、そのことによって大阪の庶民や商人から、ひいては政治的にはまったく逆の幕府、長州の双方から信頼を得たという人物。

 『燃えよ剣』で土方歳三を描いた作者の視点が政治一般に対する不信感・嫌悪感から発生しているとすれば、この点でこの作品はさらに徹底している。そもそも官や政治に対して距離を置き反撥する大阪を舞台にしているだけにこれは当然のことだろう。(そして司馬遼太郎は大阪出身である。)

 しかし明石屋万吉という侠客が結局は政治に使われ、「汚い仕事」を権力に代わって引き受けるという役回りを演じ、そうすることによって後世にも名を残したという側面を無視することはできないのではないか。この長編で、明治維新以降の記述が精彩を欠くように思えるのはそのせいかもしれない。 


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